アットタウンWEBマガジン

おもてなしの心でバラを育てる。

甲本バラ園 甲本通晴さん

 津山市領家町の解放感あふれる広々した田園風景の中に、例年色鮮やかなバラが咲き誇る場所がある。15年前からオープンガーデンとして一般の人に開放し、津山のみならず県北の人の多くが知る『甲本バラ園』だ。
取材したのが4月の末だったため、まだ蕾が膨らんできている段階で、開花は進んでいないが、このアットタウンが発刊される5月の中頃から後半にかけて見頃になるのではないかという。今回はその『甲本バラ園』の『甲本通晴』さんにバラ園について話を聞いた。




 甲本さんの自宅と畑を改装した約5アールのバラ園には、約350株のバラが植えられている。甲本バラ園での栽培品種は340品種と、植えられている350株のほとんどが重複しないという、おもしろい構成となっている。




 個人でバラを育てるのにあたって費用の問題が大きな障壁となることが多い。苗だけでも大苗になると一株4000円から8000円もするものが主流だ。
甲本さんのバラ園でも同様で、様々な工夫をしながら費用を抑えている。株が古くなり新たな茎(シュート)が出にくくなり弱ってくると、自らノイバラの種をまいて台木を作り、接ぎ木で新たな株へと更新しながら、大事に品種を守っているのだという。




30年以上も育ててきて、ダメにした品種は数十品種という数字からも、いかに大事にされているかが分かる。他にも、骨粉入り油粕肥料を使わず牛糞を購入していたが、それをさらに近所で分けてもらえる馬糞に切り替えるなど、必要な栄養素を与えながらコストダウンをする工夫をしている。また、園内のレンガなどは自分で積んでいるという。




 バラという植物は、元々非常に強いのだが、日本の気候に合っていないため、綺麗に咲かすことがとても難しいのだ。
特に雨が多く湿気が多い日本では、うどんこ病や黒斑病という病気にかかりやすい。そのため、甲本さんは風通しをよくするため十分な間隔を取って植えているのだという。それでも病気にかかるため、時期によって間隔は異なるが、定期的に殺菌と殺虫を行っている。それも、350本という株数があるため、かなりの手間だ。




 さらに心遣いとして、ハイシーズンとなるこれからの5月後半から6月初旬の来客が多い時期には、薬剤の散布は控えるようにしているのだそうだ。
例年では、この春のシーズンだけで、2500人から3000人近くの人が、甲本さんのバラを楽しみにくる。中には県外の中国地方や、遠くは関西からの訪問もあるという。




そのため駐車場の確保も重要だ。今年もバス4台を停められる駐車場と、やや離れた位置に休耕田を借り、40台の車が駐車できるスペースを確保したのだそうだ。それでも土日は一杯になり、駐車待ちが出ることもある。それでも来園者からは「広々して解放感がある」と、いい評価ばかりだというのだ。




 甲本さんは、退職まで津山で土木関係の仕事をしていたという。それが退職を迎え、今後何をしようかと思った時に、道の駅久米の里で切り花を販売しようと思ったことから始まる。最初、売るのは牡丹にするかバラにするかで迷った挙句、バラを選択したのだ。




土木業をしていた時に、仕事上造園関係者と知り合う事も多く、様々な話の中で園芸について一般の人よりも少しは詳しかったということもあり、早速、バラを数株購入し庭に植え付けをする。
 しかしここで、「切り花の販売は品種や色など流行り廃りが激しく、リスクばかりで利益につながりにくい」と忠告を受けたのだという。




実際に色々と調べてみると、その通りだということが分かり、切り花の販売をすることは取りやめた、といった経緯がある。
その時に購入し、庭に植えたたバラが『甲本バラ園』が始まるきっかけだそうだ。それからは、色々な品種を育てたくて、どんどんバラの数を増やしていったのだという。
その結果、バラの本数と品種の数が、ほとんど変わらないという、とても珍しいバラ園が出来上がったのだ。




 手がかかるバラを、この数、個人で管理して育てるのは、ほぼ限界に近いのではないでしょうか。実際に、福山市に居住する私が知る限りでも、個人で400本のバラを育てている方はいません。
そんな大変な中で、オープンガーデンにして市民に潤いや癒しを提供され、尚且つ、ハイシーズンだけで2500人から3000人の来園者の対応をされていることに、驚きと尊敬の念を抱きます。
私ごとですが、自身も数十株のバラを育てているので、今回の取材で、非常に参考になるお話しもしていただき、とても感謝しています。




最後に、『春のバラは誰でも咲かす。秋のバラは腕で咲かす』という、バラを育てている人たちの間の言葉があります。秋バラは花のカタチが綺麗で、濃く色が出ます。
春のバラより花付きが良くないからと思う人もいるでしょうが、大輪咲のハイブリット・ティー系の花は、秋こそ見ごたえがあります。
5月も華やかでいいですが、是非10月、11月のバラも観に行ってください。

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