
『中山神社御祭禮神事保存会』
顧問 永禮睦三さん
7月18日、津山の中山神社で茅の輪くぐりが行われる。
中山神社での茅の輪くぐりは、いつ頃から始まっているのか分からないとのことだが、少なくとも戦後すぐの頃には、7月18日に行われていたという。
神社本庁が6月30日に夏越の大祓行事に茅の輪くぐりを推奨するよりも、明らかに歴史は古い。また残念なことに、この茅の輪くぐりが7月18日に行われることについても、『旧暦の15日』と伝わっているだけで、他の理由は伝わっていない。

元々、茅の輪くぐりは蘇民将来の説話に由来するもので、素戔嗚により皆殺しになった一族の中で、外出して助かっていた蘇民将来の娘に対し、「これを身に着け目印とせよ。さすれば禍は避けるであろう」といって、茅で輪を作って渡したことから始まる。
それが、今のように大きな輪を作り、くぐり始めたのは江戸時代になってからとも言われている。

その中山神社の茅の輪くぐりの日に、準備、広報、出店などを行っているのが、獅子舞保存会として知られる団体の皆さんだ。今回は、この獅子舞保存会、『中山神社御祭禮神事保存会』の顧問をしている永禮睦三さん(66歳)に、茅の輪くぐり当日の事や獅子舞など、中山神社の行事について話を聞いた。

まず今回の茅の輪くぐりだが、茅の輪づくりは保存会ではなく、総代などが作るのだという。保存会としては、5年前から照明を付けたり出店を用意したり、交通整理をしたりしている。それ以前は、各氏子域町内会の若手の組織が集まり行っていたが、日にち固定という事もあり、出て作業を行える人が少なくなってきたことで、保存会が引き継げないかと相談があったことがキッカケだという。
昨年からは新たな試みとして、神楽殿で地元有志によるバンド演奏などのステージイベントや、プロジェクションマッピングなども開催している。

お参りに来てくれた人に対して、もっと楽しんでもらいたいという思いから始めた。
また、チラシを作成し回覧板などで配布してもらうなど、告知作業も保存会が行っている。
気を遣うのが、毎回出店してくれている露天商と商品が被らないようにすることだという。
「せっかく出店してくれているのに、競合して売上が落ちてしまうと、次回以降の出店に響くかもしれない」といった配慮だ。
評判がいいのがガス灯による照明。揺らめく自然の炎が祭ならではの雰囲気を醸し出す。
当日は14時に集合し、テント張りから下ごしらえなどの出店準備を行うのだという。

そんな『中山神社御祭禮神事保存会』が獅子舞保存会として認知されているのは、春の『お田植え祭』と秋の大祭『御神幸行列』での獅子舞などによる。
春のお田植え祭りは、『くわ振り』と呼ばれる白丁姿でクワを持った人が、耕すかのように舞い踊るなど、非常に珍しい祭。対して秋の『御神幸行列』は、担ぎ手が雑色を着用して担いだ神輿が神幸する華やかな祭りだ。
その春と秋の祭りで、笛太鼓の囃子を演奏し、春の『くわ振り』と、春秋共に獅子舞いを舞い踊っている。
メンバーは約40人だが、積極的に練習に参加するのは半数の20人位。秋の神幸は担ぎ手は町内会から選抜されるが、春のお田植え祭りなどでは、『くわ振り』だけで12人が必要となる。それに笛6人、太鼓2人が必要となるため、獅子舞はギリギリの状態で、なんとか守っているといった感じだそうだ。永禮さん自身も通常時は太鼓を担当しているのだが、永禮さんを含めベテラン数人は、全てのパートを習得している。

しかし、他の多くのメンバーが、自分のパート部分を専門で受け持っている。限られた練習時間の中で、全てが出来なくとも、獅子舞を高いレベルで舞える体制とするためだ。
練習は、第三土曜日の19時から約1時間少々。それから会員同士で話をして、遅くとも21時には解散する。だが、祭の時期になると、若干練習量も増えるそうだ。

そんな中での問題は、会員が高齢化する中で、将来を考えると伝統文化がついえる可能性があるということ。
そのためにも、新規会員も募集しているという。
「どこの会もそうだと思うんじゃけど、うちも将来の後継者については、心配しとります」と話してくれた。
会員参加の条件は練習に来れる事のみ。住所、年齢、性別、国籍など一切問わない。実際に今も、外国人女性2名が参加しているという。伝統文化の継承に興味がある人は、是非『中山神社』に連絡をし、保存会に興味があると伝えて欲しいということだ。
郷土の誇りでもあるこの無形文化財を後世まで伝えていく為にも、この記事を読んだ人の中から、新たに保存会に加わってくれる人が出ることを願って記事を締めくくる。
最後に、茅の輪を作る用の茅を別途用意しているので、自身で茅の輪を作り、持ち帰ることが可能となっている。自分で作れない人は、既製品の授与もしているとのこと。こちらは社務所に聞いてみて欲しい。
















