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誕生寺

法然上人誕生の地として有名な久米南町の誕生寺は、1193年、法然上人の弟子である熊谷直実(法力房蓮生)が、上人を慕い、漆間時国の旧宅を寺院に改め建立したものです。

山の裾野をやや上がったところにある誕生寺のすぐ周りは、間口が広く店舗を構えていたであろう古い民家が建ち並んでいます。やや離れた場所の広々とした田園風景とのギャップが、その昔門前町が栄えていたことを簡単にを想像させてくれます。




誕生寺の入り口になる国指定重要文化財の山門は、切り妻屋根にどっしりした柱組の薬医門で、城郭などにあるような規模で重厚な造りと、肘木から斗組、垂木に続く装飾は、実に見事で、元禄年代に建立された比較的新しいのにも関わらず「国重要文化財」として指定されているのですから、いかに素晴らしい建築物かが分かるかと思います。
その山門をくぐり境内に、入ってすぐ左手には、「逆木の公孫樹」と名づけられた公孫樹があります。
胴回りが目通しで4mを超える巨木ですが、樹高が10mもなく、幹も2mくらいの高さから急に太くなって枝分かれをしています。
その姿が、まるで根を逆さにしたかのように見えるため、「逆木の公孫樹」と呼ばれるようになりました。
「逆木の公孫樹」には、おもしろい昔話が伝わっているのでご紹介しましょう。




菩提寺(奈義町)での修行を終え、比叡山に向かう少年時代の法然が、実家に挨拶をするために、この地に戻ってきました。その際に菩提寺の大公孫樹の枝を一本折り、杖にしてこられ、実家の門をくぐってイチョウの枝を地面に突き立てものが、そのまま根が付き現在の姿になっている。
と言うものです。
そのため、枝の上下が逆のままになってしまったため、まるで天に向かって根が張っているような樹形になったとのことです。
そう思って、このイチョウを見ると本当に地面に向かって生えているような気がしてきます。

美作での公孫樹伝説は、法然の食べた弁当の箸から始まり、河原大イチョウ→阿弥陀堂→菩提寺→誕生寺となっていて、とても面白いです。

また、誕生寺に纏わる物語は他にもあり、あの有名な「八百屋お七の振り袖」がそうです。
井原西鶴の『好色五人女』に取り上げられ、世間に知られるようになった物語で、内容は以下のようなものです。




江戸の八百屋の娘だったお七は、火災にあった際に住まいにも火が回り、焼け出されて近所にあったお寺へ避難していました。
しかし、寺で出会った若い寺小姓に一目ぼれをしてしまいます。
そして二人は、それほど時間がかからないうちに恋に落ちて」しまいます。
やがてお七の自宅も建て直されて寺を出るのですが、小姓とは寺にいた頃のようには会えず、小姓への想いはますます募るばかり。
もう一度、火事が起これば、また一緒に居られるかもしれないと思ったお七は、我慢することができず、ついに付け火をしてしまいます。
当時の江戸は、木造建築が所狭しと建ち並び、一度出火してしまえば大火になる事も多く、火つけは強盗殺人などと並ぶ大罪です。
大きな被害は出なかったと伝えられていますが、当然のように、お七は火あぶりの刑となり、この世をさることとなりました。

当時は、重罪で極刑を受けたものは、葬ることも供養することも許されず、遺体は罪人たちを捨てる場所に穴を掘って捨てられるという厳しいものでした。
娘の死後から16年も経った時に、行事に参加する為に江戸を訪れた岡山の僧侶と出会いました。
江戸から遠く離れた岡山なら供養をしても罰せられることもあるまいと僧侶へ娘の位牌と振袖を渡して、供養を依頼しました。
このお寺が誕生寺で、現在まで供養され続けているのです。




さて、話を境内の説明へ戻しますが、山門の正面に見えるのが本堂となる「御影堂」となります。
この「御影堂」も元禄の建築ながら国の重要文化財指定を受けており、とても珍しく美しい建築様式となっています。
寺院建築には珍しく唐破風の一間の向拝を持ち、平入の二重の屋根が存在感を際立てています。
この二重屋根を寺院建築で見るのは多宝閣などの塔として建築されているものを除いて、法隆寺の金堂くらいしか思いつきません。
また屋根の上には、なぜか鯱が乗っており、これも寺院としては極めて珍しいものです。

そんな貴重な御影堂を正面に見ての右手側には、近年再建された銅板葺きの阿弥陀堂があります。
威風堂々と言った雰囲気がある建物で、こちらも入母屋の二重屋根で一間の唐破風向拝を持っていますすが、御影堂とは異なり妻入りとなっています。




一般の参拝者でも拝観料200円を払えば、本堂や方丈・庭園が拝観できます。
他にも毘沙門堂やお七を供養した観音堂、法然上人の両親になる漆間時国夫妻の墓になを御廟(勢至堂)、客殿や方丈庭園となる法楽園、美しいつくりの鐘楼などなど、誕生寺は見所が一杯です。

また、誕生寺といえば練り供養として有名な「法然上人御両親御追恩二十五菩薩天童迎接練供養会式大法要」があり、4月の第3日曜日に開催されています。
開催日は多くの人が繰り出し、誕生寺地区が極楽浄土と化したかのようになります。




所在地:久米郡久米南町里方808
電話番号:086-728-2102
(ライティング:星護 禄胤)

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