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一木彫 五次勝さん

一本の木は生命 木の命を感じ取って制作

美作市楢原上のルーラルミュージアム(田舎の美術館)五次勝木彫館は、のどかな田園風景の中にある。
実は五次さん、メキシコからI(アイ)ターンの移住者。

大阪生まれで、京都学芸大学卒業後、芸術を志す先輩たちがヨーロッパやアメリカの文化を学ぼうと欧米に行くのを見て「どこか違う文化にふれてみたい」とメキシコのベラクルズ大学へ。
「彫刻を全くしない頃もあり、メキシコ人の、その日暮らしの刹那主義が楽しく、遊びほうけていた」というものの、メキシコ各地で個展やグループ展を開き、1979年には、同大学の教授になった。
 


2012年に「美作・木の国」の看板を見たのが、美作市に住むきっかけを作った「今の生活が最高、環境や気候がいいし、ご近所の方も温かくイライラした気持ちがゼロになる」ととてもいい笑顔で話す。
寄り添う奥様の奈保野さんとは高校の同級生だそうで、奥様も今の暮らしがとても楽しいという。
とてもリズムの合うお二人と、猫4匹、犬1匹、ニワトリたちとこの地での生活を満喫している様子。
 


「木は私にとって材料ではなく生命です。樹木の命を感じとりながら制作しています。
石や金属、プラスチックにはない歴史に息づく木目や節、ひび、色、すべてに引きこまれたのが、木と向き合って数年たったころでした」
2011年に制作した「桜子」は、サクラの木を使ったもの。
作品はすべて一本彫。寄せ木や合成のものを使わず、1本の木に命を与える事にこだわる「サクラの色は美しく、女性の持っている生命感、強さがある。
桜子の足元に広げられた本には(桜の色は美しい、私はあなたを女神のように愛しています、あなたをいつまでも賞賛します・・・)と書かれています」。
女性を一本の木で表現した作者の深い気持ちがうかがい知ることができる。




「佇む観音」は2012年の作、材はチホール。
チホールはとても硬いが、指先にまで細かな技がみられ表情も穏やか、「ペンダントの所にちょうど涙の滴のような光が出てきたんです」光はおそらく樹脂と思われるが、何か地球規模の憂いを思っておられるのだろうかと思わず見入る。
仏像やそれにまつわる作品も多く、これから黄泉の世界に行こうとしている数人の人たちの乗った「雲の舟」が観音様の足元にある作品には、メッセージ性が感じられ、引きこまれる。




美作市に移り住んで、地元に溶け込んだ五次さんは、各種イベントでオリジナル作品を出展するとともに、子どもから大人まで、木彫り体験に対応している。
オーダーで作品制作もしており、部屋の雰囲気に合わせたものや、思い出のある木などを使って制作の依頼を受け付けている。

次回のワークショップは「なぎ山麓 アート・クラフトホリディ」が、5月1、2の両日、奈義町豊沢324ー1の「すぱーく奈義」で開かれ、木彫教室を行う予定。

ルーラルミュージアム・五次勝木彫館
美作市楢原上843ー1
 電話(0868)75ー3543
開館時間は10時から17時まで。
入場無料で、駐車場もある。
       (取材ライティング・武本明波)

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