木山神社 宮司 鈴木宏志さん
真庭市は落合町木山。
木山街道沿いを少し山の中に入る里山にある神社。こちらは実は里宮になり、元々の奥宮は木山寺と接して山中にある。
奥宮の方は、本殿など数点が県や市の重要文化財に指定され、旧社格も県社となっている。
(官幣社国幣社を頂点とし県社・郷社・村社・無社格に分類される明治から戦前までの神社の格を表す制度。今でも目安として利用される場合がある)
そんな由緒正しい神社の宮司に就任された鈴木さん。
実は、その鈴木さん、意外な面がいくつもある。そう一面があるのではなくいくつもなのだ。
その中でも、特に異色なものが2つある。
一つは、東京、大阪などでライブ開催などしているポップスバンドEast Bellのメンバーで練習場も木山神社内にあるそうだ。
このEast Bellは約5年前にデビューした本格的なバンドで、東京では渋谷の有名な名門ライブハウス、TAKE OFF 7を拠点に演奏を行っている。2年前にセカンドアルバム『Scramble』もリリースし、その評価も非常に高いとのこと。
昨年はコロナ禍の関係で予定通りいってないが、基本的な年間のライブ日程は東京が3回、大阪が3回、地元岡山県が5回など、月に一回ペースで公演を開催し、TAKE OFF 7では、90年代のスターバンド、バービーボーイズの元メンバーだったり、GAOのメンバーなどと同じステージで、共に脚光を浴びる存在だ。
このEast Bellは実は、鈴木さん以外は、落合在住なのだそうだ。
しかも全て限られたエリア。その限られたエリアとは、木山神社の氏子エリアなのだ。
そうメンバーは全て木山神社の氏子だ。
なんでも、結成のきっかけは、祭りの打ち上げでカラオケに行った時に歌を聴き、これってプロでもかなり行けるのではとピンと来たのが最初だとか。
一昨年は木山神社でも、ディナーショーのような形でEast Bellのライブを開催している。
そんな鈴木さんの音楽との接点は、かなり古い。大学進学まで話は遡り、そもそも親戚で後継者がいなかった木山神社を継ぐため、国学院大学に進学したのも東京で三軒茶屋近くの学校で、渋谷など若者の街に近く、音楽を行うためには最高の立地だと感じた。という理由からだそうだ。
何とかして東京で音楽をやりたかった鈴木さんは、当時、神社とか神道などに全く知識も興味がなかったが、とにかくうれしくて仕方なかったという。
上京後、音楽活動をしながら大学へ通っているうちに、神道についても興味を持つようになってきた。というのだから少し変わっている。
また興味は、音楽だけにとどまらない。
他にもチームを組みカーレースにも参戦している。そしてこれもチームメンバーは氏子だ。
その名も『Teamオートセンター・木山神社Racing』。
『SKT(Super K Taikyu in 備北)』が主宰する備北ハイランドサーキットのレースにエントリーして、メンバーと共に和気あいあいと楽しくベストを求めて活動している。
そんな多彩な活動を氏子の人達とするには、ある思いがある。
いくら旧県社の格式があるとはいえ、岡山県北の人口が少ないエリアにある神社。地域の人口減少と若年層宗教離れの影響は重くのしかかる。
最近の寺社ブームも観光や歴史文化を感じたい人が中心で、交通の便が極めて悪い木山の山の中まで足を延ばしてくれる人は、一定数にとどまる。
近い将来は、人口減少から総代へ就任してもらえる人すらいなくなるかもしれない。そんな将来の不安要素を少しでも打ち消したいとの思いもあるという。
そんな、多彩な活動を通して、氏子ひいては地元との関わりを深めていく鈴木さんの今後にも注目していきたい。