前回まで和歌の歴史や魅力、衣装や披講などについて紹介してきましたが、今回から和歌と近い関係にある日本の伝統文化について紹介したいと思います。
今回、紹介するのは蹴鞠。
和歌と並ぶ、古くから続く伝統文化で、雅な貴族文化として多くの人に知られています。
しかし、水干に蹴鞠袴といったいで立ちで鞠を蹴り上げている姿しか見たことがない人が多いのではないでしょうか。どのような遊びで、どのようなルールでということを知らない人が殆どだと思います。
この、蹴鞠が日本に入ってきたのは6世紀頃と伝わっています。その頃は百済から国内に仏教が伝わったとされている頃と重なり、恐らく仏教と共に伝わってきたものと考えられているのです。
実は、中国での蹴鞠と日本での蹴鞠はルールも違うので、今のサッカーに非常によく似たルールで行われていたのではないかと言われています。
信じられない方もいると思いますが、蹴鞠発祥の山東省淄博市が国際サッカー連盟(FIFA)にもサッカー発祥の地として認定されているのです。
それでは、日本における蹴鞠についてルールの説明をします。
鞠の大きさは7寸から8寸。21㎝から24㎝くらいで、身近なものだと大きなグレープフルーツくらいの大きさでになります。
その鞠をチームごとに分かれ、一定の高さより高く蹴り上げて、継続する回数を競うのです。チームの人数は、4、6、8人のいずれかで、各チームの人数を揃えて行います。
コートは一辺が3間から7間半四方となっており、5.5mから14m弱の大きさで人数によって大きさを変えていたようです。そして、人数により均等に分けられ、それぞれの区域に鞠が入ってきたものを蹴ることになります。
コートには白い砂を敷き、四隅に木を植え(臨時場所の場合竹)、その高さを一丈五尺(4.5m)以下の自由な高さで揃えるようにします。
蹴鞠にもかつては流派が存在し、飛鳥井流、御子左流、難波流に分かれていましたが、御子左流、難波流は徐々に衰退していき、現在では飛鳥井流のみが伝わっています。
作法として、最初に蹴る人や蹴る前の所作などもありますが割愛させて頂き、蹴る際の話をしますと、蹴ると同時に掛け声をかけなければなりません。「アリ、ヤ、オウ」と順々に声をかけるのだそうですが、経験者に聞くと、これが案外に難しいらしく、鞠に集中すると本来かけなければならない言葉が出てこないということです。
そんな蹴鞠、見てみたいと思っても、実際に行われているのはごく一部の神社のみで、実際に見ることがなかなかできません。
京都では、白峯神宮、下鴨神社、上賀茂神社、藤森神社、奈良では談山神社、大阪では阿為神社、滋賀県では平野神社(大津市)、四国では金毘羅宮で行われており、今日現在、定期的に行われているのはこれが全てです。もしチャンスがあれば必ず見ることをおススメします。
最後に、こぼれ話ですが、蹴鞠の名手として歴史に名を遺す『藤原成通』がよく参じていた熊野本宮や上賀茂神社の祭神がヤタガラスだということで、日本サッカー協会がシンボルマークに使用しているそうです。