アットタウンWEBマガジン

@歌壇 短歌への誘(いざな)ひ

2026年04月08日

ことありて人の優しさ昨日今日

 心に沁みて涙ぐましも

伊藤 すみ江

今月号の短歌への誘いは「あさかげ短歌会」の関東地域の編集委員を担当されている伊藤すみ江先生、村松紘子先生と武部靖江先生に登場して頂き、これまでご指導頂いた感謝と、以前紹介させて頂いていた小林賀子先生共々、今後とも「あさかげ短歌会」の発展と会員の育成にご尽力を節にお願い申し上げます。

 今回取り上げさせて頂いたのは指導者の先生方の作品であるため、ここでは歌評ではなく作品の紹介と鑑賞として掲載させて頂くこととする。

 伊藤すみ江先生はあさかげ短歌会東京事務所の代表として、会の運営、あさかげ誌の発行に全身全霊で取り組んでこられ、多くの会員や指導者仲間から慕われている。

 掲載歌も先生のお人柄から、ご自身の周りの方々との日頃の関係性をうかがい知れるお歌である。結句の「涙ぐましも」の「も」はその上の「涙ぐまし」の終助詞として使われ感動・詠嘆を表し四句「心に沁みて」を強調する秀歌である。


独り居の炎暑のしじまケトル鳴り

 答へし「ハイ」が今日の一言

村松 紘子

前の掲出歌の紹介でも書かせて頂いたが、この歌の作者村松紘子先生も「あさかげ短歌会」の関東地域の編集委員として毎月、あさかげ誌の発行に並々ならぬご尽力を頂き、多くの会員のご指導も担当して頂き大変感謝申しあげます。

 この掲載歌も指導者の先生の作品であるため、歌評ではなく作品の紹介と鑑賞という方法をとらせて頂くが、先生は明治神宮短歌大会などで特選を獲得されるなど華々しい歌歴をお持ちの方であり、筆者も常々ご尊敬申しあげている先生方のお一人である。数年前に最愛のご主人を亡くされて、近くに同じ短歌をされている仲良しの妹さんが居られるものの、住まいはお一人で暮らしておられる由、このお歌のように静かな部屋の中での出来事。普段は話しかける相手もなく、ついお茶を飲もうと火に掛けた薬缶(笛付きケトル)がピ~  と鳴り出したので、思わず「ハイ」と応えてしまった。上の句「独り居の炎暑のしじま」が効いている秀歌である。


風そよぐ東京湾の上空に

 蝸牛這ふごと雲流る

 武部 靖江

この作品の作者、武部靖江先生も前出のお二方と同じ「あさかげ短歌会」の関東地域の編集委員をされていて、多くの会員のご指導も担当され以前は会の副代表として筆者の代表としての仕事の相談相手やお手伝いをお願いしていた先生である。

 お住いは羨ましいロケーションで、東京湾を一望できる少し高台にお家(うち)が有ると以前からお聞きしていて「外国からの大型客船や日本丸のような素敵な帆船が外海から東京湾に入って来るのが手に取るように見下ろせるの」と話されていた。

 この掲出歌も、そのお住いのご自宅からの風景を詠み込まれた一首であろう。注目すべきは下の句の「蝸牛這うごと雲流る」である。並列されたお歌に「雲の消えいつのまにやら薄紅をひと刷毛塗るごと夕焼けの空」が見られる。東京湾上空の雲がごくゆっくりと移動している様子を詠われている。四句「蝸牛這ふ」とし結句「ごと雲流る」と現代短歌風に句跨がりになる技法に挑戦された秀歌である。


海老いろの珠実をかかげさ揺らぐは

 遊ぶがごとし吾亦紅はも

河野 澄恵

この作者も以前は「あさかげ短歌会」の会員として活躍されていた津山歌壇では長老格の上級歌人で、ご主人の故多作氏はNHK全国短歌大会の特選を何度も獲得され、中央歌壇からも注目を集められた大歌人であったが、急な病に倒れられ非常に短期間な作歌活動で亡くなられた事は筆者も大変残念であった。

 さて掲出歌であるがこの詠草を頂いた時、作者が昔「私は華やかなお花も良いけど目立たないお花が好きなの、例えば吾亦紅のような」と話されていた言葉を思い出した。なるほど厳格な高校教師であったご主人を支えられ、常に控えめな専業主婦として二人の息子さんを育て上げられた作者は、確かに野に咲く都忘れや吾亦紅のように人知れず楚々咲いている草花にご自身を投影されておられるのだろう。

 掲出歌の下の句「遊ぶがごとし吾亦紅はも」の結句の「はも」は上代語で終助詞「は」+「も」は文末に用い回想や愛情の気持を込めた感動・詠嘆を表し秀歌。




今月の短歌


霧の朝

木の間を透し

幾筋の

ひかりの粒と

出会ふ泡沫(うたかた)


矢野 康史




矢野康史さん プロフィール

あさかげ短歌会津山支社代表。全国あさかげ短歌会代表。津山市西苫田公民館と一宮公民館の2カ所で短歌教室を指導している。津山市文化協会副会長。



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