全国高校柔道選手権大会 男子無差別級優勝 男子団体戦3位
津山(地方)からでも頂点を見据えている
部員は30人みんなで勝ち取った栄冠
第41回「全国高校柔道選手権大会」男子無差別級優勝、男子団体戦3位に輝く、作陽高校(津山市八出)柔道部の道場は熱気と緊張感があふれる。「打ち込み」「乱取り稽古」に汗を流している柔道部員は30人。
地方から日の丸を背負って立つ選手を
指導するのは川野一道さん。
17年前に監督に就任した。
「柔道で子どもたちを伸ばしてあげたい。生徒たちは可能性のかたまりです」。
部員は川野さんが全国を回ってスカウトした、中学校ではほぼ無名に近い選手たちだ。
「(柔道の)エリートに立ち向かわせたい」と川野さんは熱い。
川野さん自身、柔道の名門で中、高、大学生時代を過ごした。父はそのエリート集団の中で指導者をしていたという経歴だが、その環境に釈然としない思いが募り、地方で「現在日の丸からもれた子から国を背負って立つ選手を育てたい」と共に練習に励み、その思いは確実に選手に伝わり、3月20日、日本武道館で行われた同大会の快挙につながった。
厳しく思いやりを持つ監督
同校柔道部の栄光は数多く、川野さんが監督に就任して、強豪選手を数多く輩出してきた。
「今年の選手は極端に大きい子はいませんが、100キロを超える選手もいます。選手それぞれの持っている良いところを伸ばしてあげたい」。
川野さんは試合前には部員たちと「一秒でも長く一緒にいる時間をつくりたい」と寝泊りを共にする。
個々にもっている良いところも悪いところも、一緒にいることで見極める事ができるからだという。
「時にくじけそうなこともあった」とラジオ番組で話したこともあった、チーム作り、環境作りの難しさを知っている川野さんだけに選手たちに対する、思いやりは深く、厳しさの中に優しさがあふれる川野さんは、これからも作陽柔道をけん引していく。
作陽高校団体戦メンバーと
柔道部員、高橋翼さん
練習に励み勝利を
高橋翼さん(3年)は、前出の「全国高校柔道選手権大会」男子無差別級で文字通り「日本一」になった。
幼稚園の頃から柔道をし、胸の奥にオリンピックの夢を秘めていたが、川野さんの誘いを受け単身津山へ。
厳しい練習に励み栄冠を手にした。
大会では一回戦から決勝戦まで、すべて一本勝ち。決勝では東京の日体大荏原高校のグリーンカラニ海斗選手に序盤、技ありをとられ劣勢、その後大外刈りから寝技に持ち込み劣勢を覆し勝利を収めた。
作陽高校に新たな歴史を刻む
一方、翌日行われた団体戦では、第4シード校として出場、2回戦から静岡県の加藤学園高校と対戦。
準々決勝では千葉県の木更津総合高校に代表戦までもつれこんでの勝利をおさめ3位。作陽高校に新たな歴史を刻んだ。
選手はまだまだ上を目指しており、日々練習に励んでいる。
今監督と寝泊りしながら取り組んでいるのは、中国大会岡山県予選。
どの選手も日本一を、オリンピックを、世界一を狙える選手だ。ケガなどせぬよう頑張ってほしい。
日本一を手にした高校生
高橋さんは、埼玉県出身。
中学校では1回戦負けを何度も経験している無名の選手だった。
川野さんと出会い、川野さんの発掘により「日本一」を手にした。
高橋さんに、趣味などはありますかと尋ねたところ「犬です」と、満面の笑顔で答えてくれた。実家に帰った時に愛犬と遊ぶのが楽しみな「普通の高校生」だった。
(取材ライティング・武本明波)