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『保田扶佐子アンソロジー展』への思い

 7月28日から津山文化センターで始まる『保田扶佐子アンソロジー展』。
保田扶佐子美術館15周年を記念し、画家『保田扶佐子』の集大成として、初期作品から80歳を回った今に至るまでの、代表的な作品を選りすぐり展示される。
今回は、その展覧会に向けて準備も大詰めとなった、郷土出身の抽象画家『保田扶佐子』先生に話を聞くことができた。

 今回のアンソロジー展の主催は「津山アートミュージアムユニット」、共催で津山市関連の団体「津山芸術文化博企画運営員会」が入る。
この主催の「津山アートミュージアムユニット」について、読者の皆さんで、ご存知の方がいるだろうか。津山市内にある、M&Y記念館、カンダミュージアム、河野美術館、保田扶佐子美術館の4つの私設美術館が、津山の芸術文化を通しての社会教育の充実を目指して、集まり結成された組織だ。
具体的には、今回のような展覧会を開催して、市民が気軽に芸術に触れ合う環境を創り出すこと、そしてもうひとつ、市内に収蔵環境の整った美術館を公立で開設することを提起している。
展覧会は、第一回として2022年に郷土出身の洋画家『日原晃回顧展』を開催し好評を得ており、今回の『保田扶佐子アンソロジー展』が第二回の開催となる。今回は、市の関連組織である「津山芸術文化博企画運営委員会」が共催に入っていることからも、第一回で一定の成果を挙げていることが分かると思う。



 一方、公立美術館開設の方は未だ機運が盛り上がらず、一部有識者の間にしか広まっていないという。
確かに残念ながら、津山にある芸術文化施設といえば、文化センターとアルネのベルフォーレ、芸術展示ホールくらいなもので、芸術作品や歴史的文化財の収蔵に必要な、気温や湿度の管理ができ、屋外影響を遮断するための多重構造内壁を備えている施設はない。このことで起こりうるのが、現在、市内のコレクターが保有している芸術作品や文化財が、将来散逸することだ。
美術館や博物館があり、地域の特色を取り上げアイデアを絞った企画展を開いている街は、人が集まり活性化する傾向にある。また、その街に住む人の意識も変化する。
津山は、芸術・文学・音楽など、文化的要素のポテンシャルは高い街であるだけに、このような文化施設が無いことは非常に残念だという。



 
 さて、ここからは「津山アートミュージアムユニット」の話から、保田さん自身の話に移る。
保田さんは、四十数年間、創作活動の拠点として、スペインはバルセロナ、カタルーニャ広場のすぐそばに居を構え、抽象画家として、バルセロナ市内の画廊で企画展を開催するなどの活動を行っている。
この抽象画の世界に辿り着くまで、保田さん自身で振り返って話を聞かせてもらった。



 こどもの頃から、元々絵をかくことは好きだったという。それが、東京の服飾デザインの大学に進学していた年の離れた姉の影響で感化されたのか、その頃から一層、絵をかくことにのめり込んでいったのだという。
東京で絵の勉強がしたいという希望もあり、東京芸大への進学を希望したが、両親が許してくれず、岡山の大学を進められた。
しかし、岡山での進学に興味を持てなかった保田さんは、金融機関に就職することになったが、金融機関での仕事にやりがいを見いだせず、わずか半年で離職する。



そんな時に、中学時代の恩師が障碍者教育を始めるので「手伝いにきてくれ」と声がかかったのだ。他にやりたいこともなかった保田さんは、手伝うことにしたのだそうだ。
教員ではなく職員という身分で、陶芸や絵画などの指導補助を行い、これが楽しかったということで、学校には毎日行っていたが、同じような仕事をしても教員でないと給料が安い。このことを不憫に思った恩師が、岡山大学に勝手に願書を送ってしまった。
そんないきさつもあり、岡山大学の教育学部で美術を専攻することとなった。
紙面の都合上割愛するが、その後結婚を経て、どうしても本格的に絵をしたいと離婚し、勉強しなおしたうえで、画廊などで展覧会を開く。



当初は具象を書いていたが、具象での表現に興味を失い、海外の絵画を見るために欧州に1年半掛けて旅行をした。この時にピンと来たのが、抽象の世界だったのだという。
 保田さんの抽象画は、何かをモチーフとして描いているものではないそうだ。
音楽などでも、何かをイメージしてメロディーを作る場合もあれば、感覚的に浮かんでくる音の組み合わせてメロディーが出来る場合もある。
保田さんの抽象画は、その時の感性で湧き出たものを表現しているもので、タイトルなどは、思いついたものをつけているだけだという。そんな保田さんの感性の世界を、充分楽しんでもらえたらと思う。

 今回は、「抽象画家保田扶佐子」と「津山アートミュージアムユニット」の双方の話となり、紙面が圧迫し文章も尻切れトンボで終わらざるを得ないことを、読者の皆さんにお詫びします。




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津山芸術文化博事業
保田扶佐子アンソロジー展

【会 期】7月28日(日)~8月11日(日)
【時 間】10:00~17:00
【会 場】津山文化センター(津山市山下68)
【入場料】無料
【休館日】木曜日
【サブイベント】
★オープニング 7月28日(日曜日)10:00~
★ワークショップ 「抽象画への誘い」(要予約)
 会場にて、紙とオイルパステルで体験していただけます。
 参加費は無料で各回先着15名限定。
 (1)8月4日(日)13:00~14:30
 (2)8月10日(土)13:00~14:30
【申込・お問合せ】
 津山アートミュージアムユニット事務局
 TEL:090-3631-3234(黒瀬)

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