昆虫先生 末宗さん
今回、美作市の作東にお住いの末宗さんを取材する機会を得た。
取材の事前に得た予備情報では、昆虫先生として有名で、津山市立鶴山中学校の先生をされているとのこと。
美作地域の小、中学生のお子さんに対し、自然教室やイベント等に講師で出向き昆虫を通して自然の豊かさや重要性を教えている。ということだ。
これは、アットタウンでご紹介するに相応しい。すぐに取材準備。
取材の電話をしたところ、快く応じでもらえることに。
しかし、テレワークの取材だと難しいこともあるから、「取材用レポートをまとめて送りますよ」とのこと。
ちょっと今までと違うと思いながらレポートを待つ。
届いたのが以下の文章。レポートというより、なんかこのまま紹介したほうが良い内容でビックリ。
なので、寄稿ということで、そのままご紹介する。
幼い頃から昆虫が大好きで、特に小学校の頃、自宅近くで採集したミヤマカラスアゲハの美しさに感動して以来、自分の住んでいる地域にどんな昆虫が棲息しているのか、分布調査を中心に、採集や飼育、生態写真撮影などに継続して取り組んでいます。
ぜひ、子どもたちには身近に棲息している昆虫を通じて、「なぜ、この虫はここにいるんだろう?」という考え方を基本にして、考えを深めて欲しいと思っています。
岡山県の北部には、人間の営みと共に共存してきた「里山の昆虫」が多く観察できます。
雑木林にはカブトムシやクワガタムシ、川や池には様々なトンボ、野原や家の周りには蝶や蛾、夏には蝉時雨も聞こえます。
ところが、ここ20年ほどの間に、大きな変化がありました。「地球温暖化」が危惧されて久しいのですが、いわゆる「南方系」の昆虫がどんどん岡山県に進出してきました。
蝶ではイシガケチョウ、クロコノマチョウ、ミカドアゲハ。甲虫ではヒラズゲンセイ、カメムシの仲間でキマダラカメムシなどは、昔は岡山県にはいなかった種類ですが最近定着して個体数を増やしています。
しかし逆に以前から棲息していた昆虫はどんどん少なくなっています。例えば里山は管理されず荒れてしまい、笹が繁茂した雑木林ではカブトムシもクワガタムシも見つかりません。追い打ちをかけるように北東部や但馬、因幡、播州地方ではシカが下草を食べ尽くしてしまい、貴重な植物に依存して生きてきた昆虫も絶滅に近い状態になってしまいました。特に有名なギフチョウは、滋賀県、京都府ではシカが食草のカンアオイを食べ尽くしてしまい、たった数年で壊滅状態です。
また、毎年のように繰り返される大規模な水害で、安定した環境に依存してきた水生昆虫も激減。ゲンジボタルやヘイケボタルも年々少なくなっています。タガメやガムシはどうにか生き存えていますが、ゲンゴロウは私自身も県内ではずっと確認できていません。
昆虫を取り巻く状況が大きく変化する中で、身近なところから「この虫、どういう名前だろう?」「タマムシはどうしてこんなにきれいなんだろう?」「クワガタムシをゲットするにはどうしたらいいんだろう?」様々な興味・関心をきっかけに、昆虫のことを調べてみると、そこから「どんな植物を食べるのか」「どんなところに住んでいるのか」「どうやったら飼育できるのか」など、どんどん学ぶ対象が広がり、結果として地域の地質、植物の分布、歴史など、多くのことを知ることができます。
地域の昆虫のことを調べると、レッドデータブックに紹介されているような絶滅危惧種にも出会うチャンスもあります。自分の住んでいる地域に「いない」ことになっている種類が見つかることもまれではありません。ぜひ、昆虫を通じて、地域の自然に興味を持ってほしいと願います。
最後にクワガタムシゲットのヒント。
(7月頃が最も出会えやすいです)
①南向きの階段状の地形で、畑や田んぼがあり、周りに雑木林がある。
②畑や田んぼの脇に、ドングリのできるアベマキ、ナラガシワ、コナラがある。
③昼間のうちに、カナブンやスズメバチ、蝶などが集まる樹液が出ている木を見つける。
④そこに早朝や夜に行ってみる。
他にも若いヤナギの木の樹液や枝先も注意。
ぜひ自分で見つけてみて下さい。ただし、夜はマムシなども活動しているので、長靴はもちろん、安全のために家族と一緒に行動して下さい。
以上が末宗さんより寄稿頂いた文だ。
末宗さんは、「昆虫を通して、自然環境の変化を身近に感じてもらいたい」とのこと。
20年前と今では、美作地域で生息が確認できなくなった昆虫が何種もいる。一方で元々美作地域に生息していなかった昆虫の生息が新たに確認されているという。
最後に「この先20年後の危機を、感じてほしい。」と