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仏画に魅せられて

 津山市内で仏画教室が開かれているのをご存じだろうか?
西寺町の旧出雲街道沿いに建つ高室山浄光院愛染寺。入母屋作りの檜皮で屋根を葺かれた鐘楼門が目を引く、高野山真言宗に属する津山を代表する有名なお寺だ。その愛染寺で33年前から月に一回、仏画教室が開かれている。
この教室は、県南より美大出身で真言宗の僧籍もある仏画師の教師を招いて行っているのだが、宗教宗派などの信仰の種類には拘わらず誰でも習うことが出来る。
今回は、この愛染寺の責任者をしている住職の奥さん、豊福さんに話を聞いた。豊福さんは50代で、他県からこのお寺に嫁入りしてきているのだそうだ。




 まず、仏画教室の詳細についてだが、第2土曜日午前と午後に分かれて、各2時間程度開かれている。午前の開催が10時、午後の開催が13時からといった具合だ。
但し、寺院行事の関係で1月と8月は開催されない。
実際の受講については、教師である先生が用意した見本を元に、礬水(どうさ)を引いた薄めの美濃紙(和紙)を重ねて、なぞる要領で写仏していく。写仏が出来ると顔彩(絵の具)を使って、色を乗せる作業へと移る。話を聞いて使っている画材がかなり本格的なのに驚く。水彩とは異なり、膠(ニカワ)で顔料を固めているため、価格も高い。
質感についても、光による粒子のキラキラ感を除けば、本格的な日本画に使用される岩絵の具に近く、日本画の入門などでよく使用される。




 教師として来られている先生は、元々住職の友人だったのだそうだ。この仏画教室も元々住職が責任者として始めたものを、奥さんの豊福さんが引き継いだものだという。
題材は先生が書いた手本の中から選んで持ってくるのだという。題材は、仏と一般に呼ばれている如来や菩薩のみならず、大黒様や天照大神などの神道の神様も題材となったことがあるという。
仏画教室に宗教宗派を問わず参加が可能なだけあって、題材も宗教宗派に捉われていないということだ。
また、豊福さん自身も受講者と一緒に仏画を描いているが、岩絵の具を使用している。
値段も高く、絵具を膠で溶くなど手間がかかるため、生徒には顔彩を勧めているが、希望されるなら、一般の生徒さんも岩絵の具を使って描いてもいい。
 教室では、手本が配られると写仏から始めるが、当然、時間内には完成しない為、持ち帰って完成させる。
話を聞くと、多くの人は夜間や早朝などの集中できる時間に、心を落ち着かせて無心で描くという。
そして完成したものを、先生に評してもらったり、場合によっては修正してもらうと同時に、教室で生徒仲間と見せ合いながら、色の出し方など情報交換を行うのだという。
このような感じで、あまり制限を設けずに、自由な感じで教室は運営されているのだ。




 この愛染寺は、寺名から、愛染明王が祀られているのではと思いがちだが、千手観音を本尊とした寺院で、津山城築城の翌年にあたる1605年の西寺町が作られた際に創建された。
元岡山金剛寺の住職が『高室山愛王院金剛寺』として開いたのが始まりで、1670年代に今の山号寺名に改められたそうだ。津山藩主、森家の祈願所だったこともあり、森家の庇護のもと、現存している鐘楼門のような、豪華な建造物が並ぶ寺院となった。
境内には赤穂浪士四十七士のひとり、神崎与五郎の墓がある事でも知られる。




また、いまでは、前住職自らがが手植えで増やし始めた牡丹も130種を越え、津山でも有名な牡丹の名所ともなっており、毎年4月中頃からゴールデンウィークの牡丹が満開になった時期に合わせて、仏画教室で描かれた仏画の展示を行っている。無料で一般に公開されているので、覗いてみてはいかがだろうか。
さらに、この仏画展示の際にも簡単な体験教室を行っている。通常は、愛染寺に問い合わせて教室開催時に体験申し込みをするのだが、この時はぶらりと立ち寄って、体験することが出来る。展示会の体験から教室に通うことになった方もいるとのことで、問い合わせることに踏ん切りが必要な方は、まず、ここで体験するのもいい。




受講料は月1500円。絵の具等の画材は自費だが、一度購入すればある程度は使えるため、言うほどの負担でもない。手ごろな費用で取り組むことが出来るのだ。

 今回話を聞いて、寺院で開催されている仏画教室ではあるが、カルチャー教室として、そしてコミュニティーサークルとして、津山の文化活動を後押ししていると感じた。
これからも、津山、県北の生涯学習充実のために、ずっと続けていってもらいたいと感じた。

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