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自らの精神を鍛え上げる

不屈の高齢ランナー 山形楽さん

 健康意識が高まる中で、今、ジョギングやランニングが流行しているのだという。
中でも、中高年ではブームといえるほど関心が高まっているのだそうだ。
岡山県北の津山にも、72歳になった今でも、年に数回フルマラソンやウルトラマラソンに挑戦し続け、その多くで時間内の完走をしている人がいる。
津山市の中心部にほど近い、小田中に住む山形楽さんが、その人だ。
元々教員をしていた山形さんは、54歳の時に体調不良により早期退職をした。ストレスによるものだったらしく、退職後には徐々に体調は回復していった。そして回復した体調を維持する目的で、60歳から始めたのがウォーキングだった。ただしこの時は、これがフルマラソンや、それより更に過酷なウルトラマラソンにつながっていくとは、想像さえもしていなかった。
 ウォーキングを初めて最初の1~2ヶ月で体が軽くなり、ウエストが3㎝も減るなど歩く効果を実感できたことで、速足を取り入れるなど、ウォーキングにどんどんハマっていった。ハマればハマるほど、さらに体調は良くなっていったことから、ウォーキングの一部がジョギングとなり、その後、徐々にジョギングの距離も延びていき、ランニングに移行していったという。




 そんなある日、知り合いに誘われて市民マラソン大会に出場することとなったそうだ。
そこからドンドン、マラソン大会などにハマっていくようになる。
山形さんは、走ることは運動として良く、体力も付き気力も充実するなど良いことが多いが、過度に体に負担を掛けるフルマラソンなどを走ると、体に良くない部分も多くあるという。だからこそ、絶対に無理をしないということを心がけているのだそうだ。練習などで少しでも痛みや違和感が出ると、ジョギングをウォーキングに変えたり、場合によっては、大事を取って休むと言った具合だ。




しかし『絶対に無理をしない』というのは練習の時の話で、大会に行くと事情は変わってくる。フルマラソンで42.195㎞、ウルトラマラソンだと、その倍の84.390㎞の距離を走破しなければならない。それも、足切りの時間制限もある過酷な条件でだ。無理をしないとゴールにまで辿り着くことが出来ない。
そこで山形さんに、市民マラソン大会に出場する際の目標や、大会で走る楽しさや喜びを聞いたところ、「もちろん共通の趣味の人に出会えるとか、話が出来るということもあるが、真の目的は、体力の限界を試すことと、精神力の鍛錬のために出場している」という応えが返ってきた。




 大会では走ったり歩いたり、歩いたり走ったりしながら、完走を目指すとのこと。半分を過ぎたあたりから、「あそこまで行ったら辞めよう」、「あと1分走ったらやめよう」と自分と葛藤しながら走っているのだそうだ。いままで、ランニングハイになったこともなく、ただただ『我慢』をしながら、自らの精神力との戦いを続けるという。云わば忍耐力、精神力の鍛錬だけでなく、自身が鍛えてきたことを計る目的もあって挑戦しているのだ。それだけに、完走した時の喜びは大きい。
しかしウルトラマラソンなどでは、大会でも棄権することもある。前回の棄権は、アンダータイツが擦れて股擦れが酷くなったためで、体力や気力の限界ではないと、自分に言い訳を用意したうえで棄権をした。次の大会に向け、自分の目標を失わないようにするためにだ。
レース途中に、本当に限界を感じると、体を壊さない為にも、言い訳になることを探しながら走っている。心が折れて止めるではなく、体力が尽きたのでもなく、トラブルでレースを止めなくてはならないと、自分自身を納得させるためにだ。




 走る事を続けているおかげで、体力には自信を持てている。同世代とゴルフに行くにしても、百姓仕事をするにしても、完走していることが自分に自信を与えてくれているのだという。歳を重ねていくにつれ、気力と体力が充実していることに自信が持てることが、日々の生活を支える活力になっている。
目標は、せめて80歳までランニングと市民マラソンの大会へ参加し完走をしていきたい、現在72歳なので、最低あと8年は続けていきたいのだという。




目標まで、かなり長いと思うのだが、「そんなのあっという間ですよ」と、あっけらかんとした感じで、答えてくれた山形さん。年齢を重ねても、なお強い向上心を持ち続ける姿勢に、尊敬の念を覚える。
気になってネットで調べてみたが、80歳を超えてのフルマラソン完走者は、日本では今まで、約180人しかいない。フルマラソン完走の最高齢は91歳だということ。
今後も、山形さんの体力気力が続く限り、頑張って走り続けて欲しいものである。

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