KENZO(須一賢三)さん
かなり昔だが、アットタウンで『たこ焼きももちゃん』という取材記事を掲載したことがある。このももちゃん、今回取材した、岡山県北のレジェンド ドラマー『KENZO』さんと同一人物だ。
ここで、『KENZO』さんがどのようにレジェンドであるか、まず、上京しての経歴から紹介することにする。
2009年からpocket lifeに加入し、以降4年間活動する。
同年、日本テレビ音楽からアルバム「ZOOM」シングル「empty」をリリースし、さらに2011年には幕張メッセで行われたカウントダウンジャパンに出演した。
特筆すべきは、同年よりシンバルのトップメーカーである「Zildjian」とエンドース契約を交わしたことだ。エンドース契約とはメーカーから、専属で機材提供を受ける契約で、超一流の証とされる。さらに、「Zildjian」のパンフレットにも『KENZO』さんの演奏している写真が掲載されている。
そんな『KENZO』さん、東京から帰郷して以来、自身の演奏活動も行うが、それ以上に力を入れているのが、子どもたちを中心に『ドラム』演奏を教える教室、『KENZO DRUM SCHOOL』だ。奈義町で倉庫を改装して開校している。
パーソナル教室として、生ドラムを叩きながら、マンツーマンで指導する方式だ。
ただし、子どもが中心というだけで、年齢が高い人、それも70代の方がいるのだそうだ。
高齢の方が昔流行した音楽を演奏すると、高度経済成長の中で伸び続けてきた日本の雰囲気が音楽の中に蘇っているように感じるという。その時代を生きてきた人だから出せるものがあるのだという。
それに対して子どもたちの演奏は、将来の可能性を感じるものだとのこと。
『KENZO』さん自身も小学生の時からドラム演奏に打ち込んできたが、今、スクールに通ってきている子どもたちは、小学校低学年の頃から始めている例も多い。小さなころから始めると、飲み込みがよく、技術的に伸びるのが早いそうだ。
しかし、演奏は技術ばかりではない。子どもたちに演奏を教えるに当たって、そう思う事がある。
突き詰めるところ演奏は芸術なんだということ。同じリズムで同じように叩いていても、アーティストが絵をかくように、その時の気持ちや体調などによって、表現が変わってくるのだという。
演奏している本人が意図しない状況でも、力の入れ具合や、太鼓の反発に対しての腕の動きなどで、無意識に音が変わってくるのだ。当然、体格や個人の性格などによっても違ってくる。これが個性なんだという。
これらの個性は、電子ドラムなどでは表現できないことで、生のドラムだからこそ、個々の違いが分かるのだそうだ。ドラムを演奏するうえで、技術も当然大事だが、実は技術以上に、この個性が大事なんだという。
演奏者の性格や体格、そして気分や体調、他にも周りの様々な要素が入り交じって、その時、その場所でしか味わえない音の空間が芸術となるのだ。
冒頭で紹介した70代の高齢の方が叩くドラムを聴くと、その時代を想像させてくれるというのも、こういったことからだ。また、子どもたちのドラムに将来の可能性を感じるのも、心身共に日々成長していく子どもたちは、叩くたびに音が変わっていく。それが可能性を感じさせてくれるのだろう。
『KENZO』さんは、「全ての人にとって、最高の演奏ってないんですよ」という。
演奏する人の個性が、聴く人の感性とシンクロした時に最高の音楽になるのだというのだ。
今、子どもたちには、積極的に公演などに出演させるように指導している。人前での演奏経験を豊富に積むことで、さらに個性に磨きをかけていく。そして彼らが、成長した暁には、世界の音楽業界に華々しく名を轟かす、スターとなる資質を持っていると感じている。
彼らの個性が持つ可能性に期待しながら、世界のホールというキャンパスに音という絵の具を使って描き出す芸術が完成する日を待ち望みたい。
最後に、今は屋台での『たこ焼きももちゃん』はしていないが、奈義町豊沢のダーツBAR店内で、たこ焼きを出している。
卵不使用で小麦粉と米粉で作る『たこ焼きももちゃん』のたこ焼きの味に期待している人は、昼から19時くらいまで営業しているそうなので、そちらまで行ってみてください。