皆さん、『寺活プロジェクト』という活動を聞いたことがあるだろうか?
仏教の天台宗、岡山5支部が行うプロジェクトだ。天台宗、岡山5支部は美作地域にあたるという。
その寺活プロジェクトの会長を務める江部山 善福寺の住職、森定慈祐(じゆう)さんに活動について聞いた。
森定さんは31歳、6年前の25歳の時に、親御さんの体調不良がきっかけで急遽帰郷することとなった。
その頃、天台宗の跡継ぎ世代で帰郷する人が重なった。
帰郷した人を含めた若い僧で、もっと多くの人にお寺にお参りしてもらいたいとの想いから集まり「多くの人にお寺に行きづらいとの感覚がある。地域を活性化できる拠点として取り組みができないか」という話になった。
そして2018年に『寺活』が始まることになる。
現在の活動の中心は『寺婚』と銘打たれた集団お見合いイベントとなっている。
実は、当初から『寺婚』を行うつもりではなかったそうだ。
まず最初は『花祭り』などの年間行事で、マルシェなどを同時開催し、檀家や門徒以外の地域の人達と協力し、多くの人に来場してもらうようなイベントを行うことで意見がまとまっていたそうだ。
その話を持ち帰って、檀家の皆さんに相談したところ、跡取りが独身の家が多く心配しているので、「婚活イベントのようなものを、してもらえないか?」との意見が出た。
ところが、親は結婚しないことが心配だが、息子はそこまで深く考えていないということが分かった。
各寺院で持ち帰り検討したところ、どの寺院でも檀家の中では婚活イベントへの賛同が強く、その声に押されて婚活イベントを開催することに決めた。
会場は、寺活プロジェクトに賛同している寺院が持ち回りで開催する。
第一回は津山市里公文にある善福寺。森定さんが住職を務める寺院だ。
不定期で年間3~4回を開催、多い時では男女ともに15人、少ない時でも男女6人程度の参加で行われている。
今年に入っては新型コロナウイルス感染症蔓延で活動を自粛しているため開催できていないのが残念だ。
その上で昨年までの開催の話になるが、様々な苦労なども聞くことができた。
僧は基本男性が多い。お見合いを行っても、参加する女性のケア方法が分からない事も多いのだ。
そうした点を解決する為、あれこれ考えた末に奥さん方にも協力を願ってスタッフとして参加してもらうことにした。
そんな中で、特に男性にコミュニケーションが苦手な人が多いとの課題が明らかになった。
フリータイムを減らし、しっかりと詳細まで企画を立て、質問リストを用意しタイムスケジュールまで全体を管理することで、コミュニケーションを取りやすい環境を作るなどまるでイベント会社と仲人を足したような気遣いをする。またカップリングがうまくいった場合の最初のデートでも、冒頭部分に立ち会うなども行う。
ただ、それだけでは全ての課題が解決するわけではなく、今後は事前に希望者に対し、コミュニケーションセミナーを開くことも検討している。
至れり尽くせりの対応だ。
また、今までは結婚が大前提であったが、今後は出会いパーティーの様なもう少し軽い感じのものも提供したいとのこと。
例えば、バツイチ同士で再婚を望んでいない人など、ある程度区切った人で気楽に相性を確認できるような出会いの場も必要だと感じるという。
今後については、お寺を地域の拠点として公民館活動のように利用してもらえるようにしたいとのこと。
地域の集会の場から、手芸や絵画のようなサークル教室の場所としても、展示会やコンサートなどのちょっとした発表の場としても利用してもらいたい。
元々、昔のお寺の存在は公民館や役場や学校を兼ねるようなところがあった。
そのころまでとは思わないが、少しでもそういった役目を果たすような形ができれば皆が気楽にお寺を訪れてくれると思うという。
他にも観光などで地域に貢献することができたらいいなとの思いもあるという。
取材中の雑談の中で、無と空(くう)についての話になった。
無と空は似て異なるものだが、それをどう伝えるか、解釈するか、感じとるかは人それぞれで違っていいと思う。
当然それが、宗派の違いになっている訳で、それを否定するわけでもない。
私なりの空とあなたなりの空があっていい。お釈迦さんは何も残しておらず、残しているのは全て弟子ですから、その時点で様々な解釈が生まれている。
全てを空(から)にして自分なりの解釈ができる。これも空なのかなんて話をした。
森定さんは、「そんな話なんかを、お茶を飲みながら話に来て欲しいんです。別にお布施が無くてもかまいませんから。もし役に立ったとか、面白かったなら賽銭を打ってくれれば充分です」と言ってくれた。