久米南町の地域おこし協力隊として、移住・定住促進にあたっている。
出身は、大阪市箕面市。自身も移住者だ。
箕面も大阪では郊外だが、久米南町は人口も五千人に届かない。
しかし、大阪から久米南町に来た時は、国道付近の家だったこともあり、程よい田舎といった感じで、少し歩いただけでは隣家もないような田舎をイメージしてきたので、肩透かしを食らった気分だったとのこと。
確かに国道は交通量もそれなりにあり、車さえあれば岡山市でも津山市でもすぐに行ける。コンビニこそ1件しかないが、コンビニまで距離がある町境に住んでいても、町外のコンビニは非常に近い。
また、他にも町内にドラッグストアやスーパーも有り、不自由というより自家用車があれば、どちらかというと便利だ。
「久米南町は、過疎地区と程よい田舎との距離が近いのが魅力です。過疎地区に住んでても、いざという時は10分も車を走らせると店に行けるんです」そう久米南町の魅力を語ってくれた。
久米南町の地域おこし協力隊は5名。柴田さんは、そのうちのひとりだ。久米南町に対し、地域活性化に繋がる企画の提案・実践を行うのが仕事となる。
5名の協力隊はそれぞれ専門の問題に対して従事し、柴田さんは冒頭で書いた移住・定住促進の担当として活躍中だ。
実際に地域おこし協力隊として活動してみて、困ったことや苦労した事についても聞いた。
移住促進のため住める状態の物件を探しているが、すでに空き家になってしまっている物件の中には、状態が悪くなり大規模な修繕が必要になる場合が多いのだと。さらに多くの場合は、それまで住んでいた方が亡くなったり、福祉施設に入る時点で空き家となる。空き家バンクも亡くなってすぐには、登録へのお願いの声をかけづらく、三回忌を待って声をかけるとなると、家が傷み始めている事も多い。今は、そのことが課題となっている。
家族も故人の意向が分からず勝手に手放したり、貸したりすることに躊躇することも多いという。
「解決策について、様々な考え方や取り組み方があるのではないだろうか」
「終活の一環として、住んでいる方が元気なうちに、将来、空き家になった際の意思表示はできないものだろうか」そういったことも踏まえ、今後、誰かに使ってもらうことは家だけではなく、その地域も含めて長く残っていくことに繋がる事を理解してもらえるよう説明したいと話してくれた。
今後の課題については、空き家の所有者や、協力隊だけでできることは限られている。だからこそ、今以上に地域の人達が自発的に、地域の問題として取り組んで欲しい。その上での活動を支援していきたいという。
空き家が増えるということは、防犯上も良くない。それ以上に地域に住む人が少なくなることで、店舗が今以上に減ったり様々な民間サービスも衰退していく。気が付いたら『ぽつんと一軒家』のような状態になるかもしれない。そうなると、草刈りや溝掃除など、地域の支え合いすらできなくなる。
なによりも、自分の故郷が消滅する。そんな危機感をみんなで共有してもらい、協力隊は地域にあったやり方を一緒に考えるところから実行までサポートする体制ができると状況はかなり変わるのではではないかといった意見だ。
一方、移住者については、柴田さんが大阪出身の移住者ということもあり、気持ちはよく分かる。コロナ禍に突入する前の2月までは、岡山県などが主催となって都市部で開催される移住者相談会にも、協力隊として同行して移住希望者の相談に乗っていたそうだ。
移住者が、まず不安に思うのが、人間関係だそうだ。
移住先で孤立しないか。といった漠然とした不安である。そういった不安を自身の経験をもとに丁寧に説明することで不安を和らげるのだそうだ。
そして移住案内につなげる。この移住案内でも工夫をしているそうだ。
移住希望者の想いや、将来の暮らしを描いたイメージを、詳細まで聴き取りオーダーメイドで案内プランを組む。移住希望者のひとりひとりが求めることに違いがあり、不安に思う事にも違いがある。
手間はかかるが、オーダーメイドツアーを始めて手ごたえがあり、成果も出ているそうだ。
町内で働こうと思うと、就労できるのが主に農業しかないなどもネックになることはあるが、これは大きな問題ではなく、岡山市内まで車で50分、津山市内まで30分程度ということもあり、岡山市内や津山市内への通勤といった選択肢もある。
そのためにも、移住者を一組でも多く定着させることが、地域を守る、故郷を守るために重要だという。
「規模の小さな町だからこそできる、町民と一体となった活動を今後も頑張ってを続けていきたい」と締めくくってくれた。
今回の取材を通して考えてみると、過疎問題の原因の一つは教育にあるのではなかろうか。全国的に、学校など教育機関の問題が、過疎問題に拍車をかける現象が起きている。
文科省の策定する学校統合の基準であったり、厳格な運用がそうだ。
当然、統廃合により学校が少なくなると移住を考える人は、どうしても二の足を踏む。
また、地元に学校がないことで教育機会を求め転出する選択をする家族も多くなってしまう。
こういったことが、実際に若年層の人口流出につながっているのだ。
この問題は、市町村単位や、ましては協力隊の立場ではどうにもできない問題で、国、県などの行政が更に知恵を絞り工夫をしていく必要があるのではないだろうか。
地域おこし協力隊の柴田さんには、今後も久米南町のために、力を発揮して欲しいとの思いを込めて、この記事を締めくくりたい。