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『重要伝統的建造物群保存地区』認定城西地区まちづくり協議会会長高須正明さん

 このコロナ禍の2020年、津山の城西地区が、国が定める歴史的に価値の高い町並み「重要伝統的建造物群保存地区」として指定されることになった。
津山市からは、城東に続き2件目の指定で、岡山県で今回、矢掛町の矢掛宿と同時の指定となる。この2件を加え岡山県下では5件目の指定だ。
そんな城西地区で城西まちづくり協議会の会長として、地域をまとめ行政とのすり合わせなどを行ってきたのが、今回お話を聞いた高須正明さんだ。





 指定されたのはこの度だが、「重要伝統的建造物群保存地区」指定をにらみ活動を始めたのは、実は7年も前の事だという。
この7年間ほぼ毎月のように集まって、指定に向けて取り組み方や地域住民の協力体制作り、また地域に活力を生むためにはどうすればいいのか? の話し合いを続けてきたという。
その中で、地域の若い人たちも積極的に参加してくれるようになり、徐々に活動に弾みがついてきたという。
今回の取り組みを、指定への評価に結び付けたのが寺巡りマップだそうだ。
これは、城西地域にある寺の縁起やいわれなどを簡単に書き込んだマップで、折りたたんでポケットサイズになっているものだ。
城西地区に訪れた人に分かりやすくまとめていることが、資料として提出した際に、伝わりやすかったのだろう。




「重要伝統的建造物群保存地区」に指定されるメリットとしては、PR効果が高くなり来訪者が増える、修繕などに助成金が出る。などがあるが、良いことばかりではない。デメリットもある。
古い家を取り壊すことがしにくい、今風の家を建てる事ができない。建てれるとしても周辺の景観に沿うものかどうかの審査があり、手間も費用も高くなる。などだ。
当然だが昔の家は、構造的に段差も大きく、冬になると凄く寒いなど使い勝手がよくない。
建物も古くなれば修理も頻繁になる。修繕に助成金が出ることを前提としても、かかる保守費用はかえって多くなる。




指定に際して最も高いハードルなのが、実際に住んでいる住民の同意となる。
住民の不利益に対して内容を理解してもらい、同意書をもらう事が必要だ。
特に城西地域は広く、この大変な作業を各町内会長が引き受けて、各世帯を一軒一軒回り内容の説明を行って同意してもらっていった。
高須さんは「各町内会長の労力と地域を思う熱意は大変なもんだったと思います」こう振り返って話してくれた。




 当初この指定に向けての活動には、城西地区の中心になる場所にある坪井町が入っていなかったのだ。坪井町は城西地区でも中心的な場所にあり、戦後まで商店街などが形成されるなど、いつも城西地域の賑わいを牽引してきた地域だ。
それが周辺町内会の積極的な活動に誘発され、坪井町でも指定に向けての機運が高まってきた。
そうして坪井町が「重要伝統的建造物群保存地区」指定に向けて動き出すことに。
このことにつれて、城西地域全体の指定に向けての機運もさらに盛り上がったとのこと。




 高須さんは「重要伝統的建造物群保存地区」指定は地域に賑わいを取り戻すための手段のひとつであって、指定が最終目標ではない。と。
これからも今まで同様、若い人にも積極的に参加してもらって意見を取り入れ、前に進めていきたいということ。
まずは、今行っている城西まるごと博物館フェアや各種イベントなどを基軸にし、ロマン館、作州民芸館(まちの駅城西)などの活用、ハンドメイド雑貨やお土産物などを提供する店舗の誘致なども取り組んでいきたいと、話してくれた。
そのためには、空き家の活用や補助制度など、行政に対しての要望も求めていく必要がある。




また、地域に住む人たちにも地域の歴史と文化をもっと知ってもらいたいとの思いから公民館活動の中で講座を設けるなどもしている。
地元の積極的な意見をまとめると同時に、行政とのパイプ役になるなど大変な役割だが、津山口駅が津山の玄関口だった頃のような賑わいに城西地区を戻したいという。
今回の取材で、高須さんの言葉の端々には、地元の協力であったり、地元の思いなどという言葉が多く聞かれた。
実は、全国でも「重要伝統的建造物群保存地区」の指定を求め住民が団結し働きかけることは他に例がないのだ。
城西に暮らす人々の、地域愛と団結心を強く感じさせるエピソードだ。

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