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桜の山を守り続ける

企業組合 旭さくら会 会長 大﨑俊男さん

美作地域で桜の名所と言えば皆さん、どこを思い出すでしょうか。まず醍醐桜などに代表される真庭市域に多い巨大な一本桜と久世付近の旭川土手、それに津山城鶴山公園、津山の一本桜と言えば阿波にある尾所の山桜、あとは美咲町の三休公園などが有名です。また他にも勝央町の肘川の土手の桜並木が「いいよ」といった声などもあります。

 今回、記事として取り上げるのは、美咲町旭地区、旭川に通谷川が注ぎ込む、両川に挟まれた急峻な山に作られた公園『三休公園』。旭川ダムのダム湖『旭川湖』から続く山全体に絢爛とした桜が咲きほこる。
三休公園に上がり眼下を見下ろせば、国道429号線沿いの桜と共に、旭川湖が一望のもとに収められる絶好のフォトジェニックスポットでもある。




 この見事な桜についてのお話を、『企業組合 旭さくら会』の会長、大﨑俊男さんに聞いた。
旭地区は、この三休公園だけでなく、ダム湖の周辺なども含め、地区全体に6000本とも7000本とも言われる桜が植えられており、その華やかさは、玉野市の『みやま公園』、尾道市の『千光寺公園』、高松市の『公渕森林公園』、徳島美馬市の『八百萬神之御殿』、等の全国的にも有名な桜の名所と比べても一歩も引けを取らない。
このうち三休公園には、約5000本を超える桜が植林されており、日々、傷んだ樹の伐採、枝打ち、毎年、100本~200本の捕植をするなどの、地道な整備活動が続いている。
その活動を請け負っているのが、『企業組合 旭さくら会』。町からの指定管理業者といった位置づけでの活動だ。




そもそも、美咲町の旭地区に桜が植えられたのは、旭川ダムが完成した昭和29年から数年たった頃。
県の事業だと思うが、建部から旭地区までの間に多くの桜が植林されたという。
その後、町の観光事業として三休公園にも桜が植えられ始め、今の旭地区が形作られていく事になる。
そんな中、平成23年に町が予算の関係で管理が難しいとの話が、大﨑さんが当時活動していた商工会にあった。
そこで、色々話し合いがもたれ、商工会として企業組合を立ち上げることを思いついた。
しかし、三休公園は地域、ひいては町民の財産だということもあり、地域の機運を盛り上げるためにも、自治会などにも声をかけ、会員に参加してもらえるよう頼んだ。
商工会や自治会の有志、約30人集まってのスタートだったという。
現在は会員20名程度、運営方法は、会員が出れるときに出て、桜の管理をするスタイルだが、会員以外の参加もあるという。
事業計画は大﨑さんたち役員が決める。
1月から2月は、捕植のための植林。植林が終わると引き続き、傷んだ枝などの枝打ちをする。最初に植えられた桜は、樹齢60年近く。ソメイヨシノは老木となると、てんぐ巣病にかかりやすくなる。
この病気は、病巣部を切除するしか有効な対策はなく、放置しておくとすぐに周辺の樹木に蔓延する厄介な病気なのだ。高いところは高所作業車を借りての作業なども行うなど、本格的だ。
夏になり6月からは、下刈りを行う。下刈りも年二回行い、6月から初めて、8月くらいまで一回目を終わらせる。しかしまた9月からは二回目の下刈りが始まる。広い公園なだけに大変な作業だ。
仕方ない話だが、旭さくら会が管理をするまでは、桜に絡みついた弦などを切ったり、手鎌でしか行えないような細かい作業はできていなかった。こういった作業が「特に最初はとにかく大変だった」という。





 三休公園管理について、今の問題は三点ある。
ひとつは、先にも紹介した樹齢60年が迫ろうとする桜の、てんぐ巣病対策と植え替え。
年を取ったソメイヨシノは抵抗力が弱く、早めに枝を落としても幹まで侵されることが多く植え替えが必要になっる。
斬り落とした部分に逐一薬を塗っていき、てんぐ巣病が幹に移らないようにするなどの方法もあるらしいが、これだけの桜の数では、とてもではないが手に負えない。
そこで、新しい苗に順次植え替えることも検討しているという。
大木なうえに傾斜がきつい。斜面の伐採と植え替え作業を考えると、かなりの労力を必要とする。さらには、ソメイヨシノには連作障害の問題もある。土壌改善がしにくいこともあり、品種を変えることが現実的だが、三休公園に植えた桜のほとんどが、ソメイヨシノだけに品種を変えることに抵抗もある。今後どうするのか頭の痛い問題だ。
そして、二つ目が公園内にある施設の屋根替えの問題。
施設内にある建物は合わせて四棟。うち三棟が茅葺屋根となっているのだ。当然、茅葺屋根は自然素材なので傷みが早く、すでに葺き替えが必要な状態になっているという。
町などの行政機関にも話をしているが、有効な解決策が見えてこない。何か方法はないかと、様々な助成制度を調べたり、寄付を集めるにはどうするのかなど、クラウドファンディングについても勉強したりしているのだそうだ。
最後の問題が、後継者だ。
自分たちが行ってきた活動を、引き継いでくれる人たちへの世代交代。
「世代交代を行わないと、年々高齢化するのは桜だけではないからね」なんて冗談ぽく話してくれた言葉の中に危機感を感じた。
後継者の問題は、私が取材する多くの活動している団体で問題意識を持っていた。そして全国どこでも、同じような問題がある様に聞く。すぐにどうにかなるような問題でもないだろうが、この記事を読んで興味がある人は、三休公園 民話の村管理事務所まで問い合わせて欲しい。
今年も『みち停あさひ』の横の駐車場で、正面に広がる三休公園や川沿いに咲き誇る旭地区の桜をゆっくりと眺めたい。

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