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地元の風景を守るために 農業組合法人『アクト神代村』植本幸男さん

 津山市の南西部で、なだらかな傾斜地に広々とした田園風景が広がる。
そういったイメージの地域が神代地区だ。
県北に住んでいる多くの方は、神代と聞けば『神代梅の里公園』で、何となくは分かると思う。
その、神代地区にある水田の半数以上を管理して水稲栽培を行っているのが、今回紹介する農業組合法人『アクト神代村』。




 一言で神代地区の半分以上の耕作面積と言ってもピンとこないだろうが、数字で言うと23ヘクタール、よくテレビなどで例えられる東京ドームだと、なんと約5個分にもなる広さなのだ。
この広さの水田を、メンバー13人で管理している。
全員農業経験者と心強い。その内、主になって活動しているメンバーは5人だそうだ。
ここで今から、6年ほど前の2016年に設立されたアクト神代の立ち上げの経緯について簡単に紹介したい。




以前から高齢化が徐々に進んでいた神代地区では、田んぼを耕作できない家が少しずつ増え、農業放棄地が増えだしていた。
そんな中、植本さんに代わりに田んぼをしてもらえないかとの話が来たのだそうだ。
年を追うごとに、徐々にそういった声が多くなり、植本さんの友人でもある飲み仲間に、話をしてみた。そこは、いつも集まってワイワイ楽しく盛り上がっている仲間。「田んぼに稲が実る地元の景色が変わっていくのは寂しいし、そりゃあ皆で受けてしようや」とノリの様な感じで意見がまとまり、耕作放棄地で水稲栽培を行うことが決まったという。




「みんなで楽しく田んぼを荒らすことなく、故郷の風景を守っていきたい」これがスタートする際の仲間内での共通の思いだったそうだ。
実際にスタートするに当たり、色々調べていくうちに、農業法人組合にした方が、様々な助成事業などが利用できるので有利だということで法人化することと決めた。
活動をしていくうちに、アクト神代村の話が広がっていき、「うちの田んぼも面倒見てもらえないだろうか?」といった声が増えてきた。




そうしたいきさつで管理していく田んぼも年を追うごとに増えて来た。
そうこうしているうちに、組合の活動を見た人が賛同してくれ、新たにメンバーに加入してくれるなど、徐々に人数も増えていき、現在では13名を数えるまでになったとのこと。
組合のモットーは、今も最初と変わらず「いつも明るく、みんな楽しく和気あいあいと」今も楽しく、活動している。




耕作の内訳は、食料米と飼料米、そして別にホールクロップサイレージを育てている。
この聞きなれないホールクロップサイレージって? 実は稲が充分実る前に稲と実を一緒に収穫し発酵させたものらしく、稲わらを飼料にするものだそうだ。そして、それ用の品種もあるとのこと。
初めて聞いたことに、ちんぷんかんぷんになりかけながら、自分なりに理解をする。




多くの田んぼが集まったことで、日当たりがいいところは食料米、条件が劣るところは、飼料米、そして、谷部等のさらに条件の悪いところはホールクロップサイレージを作る。
このように様々な工夫をすることで、効率的に農業を行い、事業として運営できるようになっている様だ。




 今回の取材で心に残ったのは「この風景を孫の代になっても残したい」という強い思いが、組合のメンバーに共通しているということだ。
何もしなければ、稲穂は実らない。





春の代搔きをして水の張った風景も、夏の青々とした出穂前の風景も、秋の首を垂れた黄金色の風景も全てそうなのだ。
読者の皆さんには、是非、神代地区の広々した水田を見ながら、散歩を楽しんでいただきたい。

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