コミュニティスペース・落合ＳＡＫＡＩ-ｅ運営会社
あるふぁーむ代表 吉原啓介さん
真庭市の落合に、変わった施設があるのをご存じだろうか？
真庭高校や落合病院がある垂水地区の中心地、商店街の一角だ。今年になってキッチンスペースをすぐ隣にオープンして新たな展開を始めた。
この『コミュニティスペース・落合ＳＡＫＡＩ-ｅ』は、非営利で飲食を伴わないものであれば、地域住民なら誰でも原則無料で利用できる施設だ。無料の条件に当てはまらない場合でも、１時間当たり200円から500円と格安でスペースを貸し出している。その他にも、フリーランスの人がワーキングスペースとして利用できたり、法人向けサテライトオフィスとしての活用も視野に入れている施設なのだ。
そして、この施設の運営をしているのが『株式会社あるふぁーむ』であり、そこの代表を務めているのが吉原さんになる。
実は、この施設の立ち上げから吉原さんは関わっているという。
もともと落合出身の吉原さんは、大学進学と共に真庭市を離れ、首都圏に移り住んだ。大学卒業後も東京の会社に就職しキャリアを積んだ。結婚や子育てなど生活基盤は首都圏で築いた。不動産関係の会社では事業用不動産にかかる仲介や運営・コンサルティング、内部監査業務などに携わり、2016年にフリーランスとして独立した。
その後、2018年に地域おこし協力隊として、家族を関東に残したまま落合の地に戻ってくることとなる。その目的は、今までのキャリアの中で身に着けた不動産関連の知識で地域に貢献できるのではないかとの思い。そしてもう一つが、住民たちのコミュニケーションで作る地域コミュニティを具現化したいとの思いだったそうだ。
その活動の一つが、冒頭に紹介した『コミュニティスペース・落合ＳＡＫＡＩ-ｅ』でもある。
地域コミュニティ立ち上げに取り組むのには、地域の活性化以外にも理由がある。対人関係と自分の居場所に悩んで高校を中退してしまった娘さんの存在だ。
田舎町に残る地域コミュニティを守り、発展させることで、娘さんと同様に発達障害を抱えているこども達が、他者との交流を楽しみながら育っていける環境を整備してあげたいという思いもあったとのこと。
発達障害は程度に違いはあれ、脳の特性の得手不得手に偏りがあるだけで、経験を積んだり自信を持ったりすることで、問題なく日常生活を送れる場合も多い。
発達障害を抱える人に現れやすい二次的な問題として、劣等感から自分を卑下したり、承認欲求が強くなる傾向があるという。そういったこども達に、何でもチャレンジできたり、コミュニケーションを深める中でお互いを認めあえる環境を作ることで、自信を持たせることができれば、徐々に日常的な困難にも対処できるようになっていく。前出の娘さんも通信制で高校を卒業し、現在は同じ苦しみを持つ人たちの役に立ちたいと大学の通信課程で心理士を目指して勉強しているそうだ。
吉原さんは、発達障害の現況を把握する為に、高校や中学校でも話を聞いて歩いたという。
その結果、はっきりした根拠はないが、現場の肌感覚では、30年くらい前と比較しても発達障害の診断を受けるこどもが増えていて、少しオーバーかもしれないが倍近くにも感じるらしい。
これは、診断基準の変更によって、より多くの人へ支援の手を向けられるようになったこと、発達障害への認知度が高まり、今まで見過ごされていた障害が見つけやすくなった等の意見がある。
こうしたこどもたちが抱える生き辛さが、環境の整備で解消できるのであればそうすべきだという。
しかしながら、『コミュニティスペース・落合ＳＡＫＡＩ-ｅ』は障害者福祉施設ではない。
地域コミュニティ施設として地域の活性化を図りつつも、様々な人のチャレンジの足がかりとして、また、民間事業者でも個人でも、誰もが使える施設として、広く活用することが可能な施設なのだ。
今回、この隣にオープンしたキッチンスペースも同じだ。基本は誰でも申し込むことで利用できる。隣でパーティーをしたいのでキッチンスペースを借りて調理をするでもいい。みんなで花見に行くのに、つまみを作って外に出かけるなどでもいい。ただし、保健所に食品衛生の許可申請ができないので、販売目的のものを調理することはできないということだ。コミュニティスペースとキッチンスペース、どちらも大概のことはできるので、利用してみたい人は『株式会社あるふぁーむ』まで連絡してみるといい。
実は、吉原さんに取材を行おうとしていたのが２月のことだった。
その後、市議会議員の選挙に立候補するとの話が入ったため一旦取材を延期し、この度、仕切り直しで取材をすることとなった。
色々あったが、この度、新たに市議会議員といった立場が加わって、地域の為にさらなる活躍を望みたいと思う。
