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アットタウン歌壇主催

一周年を迎えて 矢野康史さん

 知らない人も多いが、今、TwitterなどのSNSの世界では、現代短歌がブームとなり、#短歌のタグを添えて、数秒に一回のペースで、ツイートされている。
それも若者を中心とし、身の回りの一瞬を切り取ったような、平常の暮らしといった内容の歌が詠まれており、これが驚くほど盛んなのである。
そして、アットタウン短歌コーナーが、復活して今回でちょうど一年となる。その間、アットタウン編集部にも、何度か短歌コーナーを評価する応援の電話もあっている。
そこで、アットタウン短歌コーナーの選をお願いしている『全国あさかげ短歌会』会長 矢野康史さんに、この一年を踏まえて、今回、アットタウンの短歌コーナーや津山の短歌文化について話を聞くこととした。




 まず、アットタウンに掲載を再開して変わったところを聞いてみたところ、「いやあ、凄く変わりましたよ」という答え。矢野さんの短歌教室を中心に詠進(歌の投稿のこと)してもらっているといった事情も有って、生徒さんのモチベーションが高くなっているという。
「やっぱり励みになりますよ。半ページから1ページに増えたということで評論の部分が、しっかり入るようになったのも大きいと思いますよ」とのこと。
場合によっては、歌が一定のレベルに達していなくても、指導の一環として、コミュニケーションを取りながら、作者に言葉の選択肢を示して、納得すれば入れ替えて、掲載することもあるのだそうだ。
しかし、作者の意図は必ず尊重する方針だという。
歌は100人いれば100通り、都度都度の作者の想いがあって、はじめて成立するものだ。その人が感じたことを表現できてこそ歌の意味がある。その考えは、矢野さんの教室での指導方針と完全に一致する。
矢野さんの教室でも、アットタウンに載ることが、手の届く身近な目標となっているというのがうれしい。
そのこともあり、矢野さんの短歌コーナーでは、秀作や佳作などの賞を設定していない。賞を気にするあまり、感じたことを表現するより、あえて難しい表現を用いることで、歌がかえって分かりにくくなる、ということがないようにとの配慮だ。





 また、アットタウン再開の影響は、それだけではない。
街で普通にあった旧知の方からよく声を掛けられるようになったというのだ。
矢野さんは「今まで短歌を難しいと思っていた人に、短歌を知ってもらえているのではないか?と思いますよ」という話をしてくれた。
アットタウンでは、冒頭でも説明した、口語で表現し、普通に現代生活で使用する新仮名を使って表現している、現代短歌と呼ばれる短歌を中心に掲載してもらっている。
これは、普段使わない文語体で旧仮名を使う、近代短歌と違いかなり敷居が低い。極端な言い方をすれば、五七五七七のリズムだけを守ればいい、といった短歌本来の姿に立ち返ったものだ。
 実は、津山では俳句に押されて短歌をする人が少ないのだという。
これは津山市が、社会教育と観光行政を絡めて、郷土出身の西東三鬼を推して、俳句を推進してきているという事もあり、短歌になじみが薄くなっているのだ。
しかし、川合玉堂の親友としても知られる尾上柴舟など、全国に誇る著名な歌人も津山にはいる。
鶴山公園に碑があるのでご存知の方も多いと思うが、玉堂の画に柴舟の歌が賛として添えられている物も多く、文芸界だけでなく、日本画の世界でも著名な存在なのだ。
元々、俳句は短歌の連歌という遊び方の中の、上句(発句)部分が独自に発達したもの。言わば、俳句は短歌の子供みたいなものなので、俳句と短歌が争うかたちではなく、共に親しんで欲しい。そんな思いがあるようだ。





 アットタウンの歌壇を盛り上げるために、今、課題となっているのが、矢野さんのあさかげ短歌会や教室以外の詠進が少ない事だ。
実は、アットタウンは矢野さんの教室だけでなく、他の会に所属し、歌を楽しまれている人や他の教室に通っている人、もっと言えば、我流で詠みTwitter投稿しているSNS短歌を楽しまれている人や初めて歌を詠んだ人、誰が詠進(投稿)しても構わないのだ。
矢野さん関係以外の詠進を増やす対策として、アットタウンを介さずに連絡出来るよう、直接、矢野さんの連絡先を分かりやすく、掲載するなどの改善策を提案してもらった。早速今月号から、改善する予定だ。
また、美作地域に住むSNS短歌を詠む人達と上手く連携を取り、津山の短歌界をどんどん盛り上げたいということだ。
AFWアットタウン社としても、その一翼を担っているとの評価をもらい、その責任を感じ身が引き締まる思いだ。





せっかく衆楽園には曲水庭園もあり、出身の著名歌人もいる津山。そんなこの地で歌がもっと親しまれることを心から願うばかりである。

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