美作ビアワークス 三浦弘嗣さん
今年は例年より早く、暑い日が続いている。そんな時に欲しくなるのがビール、というビール愛好家の方も多いのではないか。
今回はそんな皆さんの、興味を引きそうな話を聞けたので紹介しよう。
「地ビール」とか「クラフトビール」という言葉を聞いたことがあると思う。美作地域にも3か所の地ビール醸造所がある。
そのうちのひとつ、真庭市の勝山に醸造所を構える『美作ビアワークス』を3年前に立ち上げたのが三浦弘嗣さんだ。
真庭市の落合で酪農の家に生まれ、地元でのびのび育って山口県の大学へ進学した。
そこで微生物の研究に興味を持ち、その面白さにドンドンのめり込んでいった。前職で鳥取にてビール醸造に出会い、微生物研究をしていた経験から、酵母にも夢中となった。
結婚をきっかけに、独立し真庭に戻る事を決めた。
しかし、真庭に戻ってから大変だったという。まず、醸造所を構える建物に困った。あちらこちらを当たってみたが、貸してもらえそうな場所がない。真庭で始める事を諦めて、津山で探そうとしたときに、NPO法人の勝山・町並み委員会に在籍している知り合いから、「真庭でしてくれ」と言われ、場所探しを協力してもらえることになった。
そうした中、それまで10年も使われていなかった旧学校給食調理場の建物があり、個人で打診した時は断られた物件だったが、勝山・町並み委員会から真庭市に働きかけてもらい、ようやく借りられることとなった。
今から約4年前の3月に免許が下り、5月のゴールデンウィークの頃から醸造を始めた。
立ち上げから、今に至るまで苦しいことが多かったそうだ。
取り扱ってくれる酒屋さんを探し、少しでも知ってもらう為、イベント出店なども積極的に行ったのだという。ただ、コロナ禍に入ってから、思うようにいかないところもある。
最近、クラフトビールのプチブームの後押もあってか、徐々に認知が広がってきたが、気楽に買ってもらうには、まだ価格が高いのがネックとなっているのではないかと感じている。
贈答用などや観光地での外食で、比較的よく売れているのも、それを裏付けているのではないかとのこと。
また、県北だからではないか、という問題もあると考えている。
イベントも日中のものは、出店しても、あまり飲んでもらえないそうだ。それが、日が暮れてのお酒が出ることが分かるイベントは、それなりに飲んでもらえる。
原因は「車社会?」それとも「家族で大人だけ飲むことに抵抗がある?」。
県南でのイベントと比べて、明らかに違う傾向も見られるそうだ。
また、『まにわ発 酵’S』という組織もある。観光局の支援も受け、定期的な活動を行わない緩い感じの組織だそうだが、デパート期間展や雑誌特集などで、声がかかったりする。
周りの助けもあり、徐々に軌道に乗り、現在は地元真庭や近隣の津山など最優先に対応している。
昨年は、新たにタンクを4基設置するため、中古でフォークリフトを買い免許も取った。
自分たちでできることは、自分たちで。そうして、経費の削減の努力を行っているのだ。
「今は地元にお世話になるだけ」との思いも強いという。
ビールは麦芽とホップと水を酵母で発酵し出来ている。その3つが主原料となり、酵母を使い分けることで、味を調整するのだそうだ。しかし、それ以外に副原料と呼ばれる材料を主原料と同時に使うことでも味を変えられるという。その副原料に、少しでも地元産の『ハーブ、スパイス、はちみつ、米、ぶどう、いちご等のフルーツ』も積極的に使っている。
また、ラベルも地元のデザイナーのラベルを採用するなど、地域性を強調して真庭に拘っていきたいのだという。
醸造所に来所して、地ビールを楽しむこともできるが、あまり多くが一度に押し寄せると、困ってしまうそうだ。
提供はビールと、車で来た人のためにカフェメニューとを用意してあり、つまみもあるという。また普段は醸造所の見学は行っていないが、年に一度の勝山まちなみクラフト市では公開しているので、見学をしたい人はクラフト市の時にチェックするといい。
今、ビールの消費地は、地元では湯原、蒜山など観光地が中心となっている。
地元へ観光客が増えれば、自らに返ることもあり、地元の盛り上がりに貢献したいという思いは強い。美作ビアワークスをきっかけに、県北の良さを知ってもらえたり、将来は『美作ビアワークスに行きたい』という最終目的地となり集客のツールの一つとして、地域に恩返ししたい。
資金と人が潤沢になれば、やりたいことは山ほどある。スペースにも余裕がある。
そのためには、まだメーカーとして弱い。少しでも多く製造、販売し、スケールメリットを出して、もっと買いやすい価格で提供したい。
さらには、新しいこともしたい。その時期しかない果物など、季節限定の商品を増やしてていくことを考えているという。真庭の観光と共に、美作ビアワークスが発展する姿が目に見える様だ。