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思いをカタチに

段ボールクラフト作家 笠光生(りゅう みつお)さん

湯原温泉街にある『はんざきセンター』に行ったことがある人はいるだろうか? オオサンショウオのことを、この地域では『はんざき』と呼ぶ事にちなんだ名称となっている。
湯原温泉の真庭市湯原振興局の隣にある施設で、国の天然記念物でもある、生きているオオサンショウオが見られる施設としても知られている。
この、はんざきセンターの展示室の天井から吊り下がっている、段ボールを加工して作られたオオサンショウオを製作したのが、今回紹介する笠光男さんだ。





 このオオサンショウオは、全長3メートルほど、全体が曲線のみで構成されているので、製作の難易度はかなり高いという。製作時間は、毎日、仕事が終わった3~4時間で作業を行い約1ヶ月と、かなり時間もかかっている。文字通り大作だ。




 そんな笠さん、段ボールでオブジェを作り始めたのは7年ほど前。
最初に作ったのが風神。
尾形光琳の風神雷神図で有名なあれだ。本当は風神と雷神をペアで作りたかったらしいが、現在停止中だということ。「時間が取れれば、セットで完成させたい」と話してくれた。
当時はまだ、世の中に段ボールアートが、全く知られていない。作り方の解説も無ければ、見本も無い。
そんな中、創意工夫をしながら手探りで作ってきた。それでも「その不自由さを乗り越えていく、そこが面白いんですよ」と笠さんは言う。




最初に曲線を出した時は、ナメすように擦って曲げた。しかし半球に近い形を作るにはどうすればいいのか。試行錯誤した結果、水を使い湿らせてから、破れないように細心の注意を払いながらナメした。
「レザークラフトに近いかもしれませんね。でも破れるリスクがあるので、作業はかなり繊細ですけど」と裏にある苦労を言葉で覆い隠すように、サラリと言う。
大作だと自重で潰れてくるので、ベニヤと段ボールで骨格になる芯を作って支えているそうだ。実は笠さん、本業は自営で大工をしている。骨格づくりも本業の技術を使い難なく克服するのだ。





 初めて製作した大作は、勝山の図書館に展示された実物大のピラルクー。アマゾンに生息する生きた化石と言われる3メートル前後の大魚となる。これは藍染作家さんとのコラボ作成で、胴体部分が藍染和紙で貼ってあり、ランタンとなっている。真庭市の関係者がこれを見て、オオサンショウオの制作依頼に繋がったのだという。
取材の過程で、この実物大のピラルクーを譲ってもいいという話になった。大きなものなので店舗等の天井が高く、広い場所でしか活用できないが、もし天井から吊り下がっていれば、来客者のインパクトと話題性が抜群なのは間違いない。もし、譲って欲しいという人が居れば、価格は相談の上で決めたいそうだが「無茶な値段は付けませんから」とのことなので、笠さんを知っていればアットタウンでみたと直接問い合わせるか、アットタウンまで問い合わせて欲しい。





 最近、笠さんが力を入れているのが、こども達を対象にしたワークショップ。
ワークショップは、依頼があれば積極的に引き受けているが、こども達を対象としたものは、さらに重要視している。
こども達を教えると、思ってもみない発想に感心させられることが、時々あるそうだ。
そういった場面に遭遇する度に、こどもの持つ可能性の大きさに感嘆するのだという。
自分たち大人が、この可能性を潰すことなく、逆に伸ばしていくことを、手助けする必要があると強く感じたという。





そして、段ボールを使った工作は、それに最も適しているのだとのこと。
だから、こども達を対象としたワークショップは楽しくて仕方ないのだそうだ。当然、依頼があれば、大人向け、親子など大人とこどもの混合、そして、こども向けとどれでも受けるという。




しかし、大人とこどもでは、集中力の違いから作業を行う時間を変えているので、どんな人を対象にして行うか、決めて問い合わせて欲しいそうだ。出来る限り、時間を割いて対応したいとのこと。費用も材料費などの諸経費程度なので、SNSなどから気軽に問い合わせて欲しいという。
「ワークショップでこども達に教えることで、子供たちの個性を伸ばす。そして、数十年後には、その子が地域を背負うようになり、また、こども達に様々なことを教えたり経験させてあげる。




そのようにして、この地の繁栄が継続されていけば理想です。話が大きすぎますが」
 そんな想いで続けているという。
今後は、定期的に大作の依頼を受けながら、実用性がある小物を作ることが理想だという。
当然、それにワークショップの活動を織り交ぜていくことだろう。
笠さんの活動が地域に定着し、更に独創的で心豊かな人のリレーに繋がることを願いたい。

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