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山の整備で地元のシンボル復活

美作市 大原地区古町 月見伊津夫さん

 地元、大原小学校の校歌にも歌われる古町のシンボルとなる山『高照峰(こうしょうほう)』。標高655m、大原駅から西に向くと真正面に、綺麗な形がそびえている。
高照峰は山頂部分を除き、山全体が古くから農耕牛の飼料とする草の採草地だった。牛が農耕の主力だった50~60年前の頃まで、毎年3月には村の人が総出で山焼きをしたそうだ。
山焼きをした後、高照峰が真っ黒になったのを覚えている人も多いとのこと。




毎年、春の山焼きの後に生えた、わらびやぜんまいを採りながら山を登り、山頂付近の広場で、古町の街並みを見ながら休憩をしたという。
山頂付近が保安林になっていたため、採草地と保安林の間に防火用の6mの道が一周しており、山が鉢巻をしている様に見えたため『鉢巻山』とも呼ばれていたそうだ。




そんな『高照峰』を懐かしく話してくれたのが、今回、取材を受けてくれた「ふるさとの山・山道等を整備する会」の会長を務める月見伊津夫さん。
 昨年、この「ふるさとの山・山道等を整備する会」で『高照峰』の登山道や山頂広場の整備を行い、終了後には、地域のこども達を対象にツリークライミングの体験イベントも開催した。




20人の2部制で40人の募集もすぐに集まった。こども達を対象としたイベントを開催したのは、今のこども達にも、月見さんがこどもだった頃のように、再び『高照峰』に親しんで欲しいという思いからだそうだ。




 この「整備する会」を立ち上げ整備を行うきっかけとなったのは2018年。
美作市の山マップを有志で作る際に、協力の依頼があったからだそうだ。大原地区から3山が載る事になった。
月見さんたちは掲載する山の情報をまとめていたのだが、その中でもシンボルとなる『高照峰』を実際にトレッキングルートとして考えると、山頂からの景色は立木で遮断され、登山道は雑草や倒木で荒れ果てて、とても多くの人に、トレッキングを楽しみに来てもらえるものではなかった。




そこで、鉢巻山の再現は無理にしても、自分たちの力で『高照峰』を、気楽に登れて景色などを楽しめる山に戻せないかという話が出たのだという。
早速、美作市や大原観光協会に支援の依頼をするなどし、翌年には地元有志10人で「ふるさとの山・山道等を整備する会」が立ち上がった。現在は3名が追加加入し、13人で活動をしている。





 まずは、「おかやまの森整備公社」にお願いをして、山頂まで200m地点まであった作業道を利用し登山道としてもらい、残り200mの道づくり作業を行う事にした。
山仕事の経験がない素人集団だったが、チェーンソーを10台購入し、講習にも行った。
整備士をしている月見さんは、チェーンソーの仕組みを知るために、分解などを行い作業をするための準備を進めていったのだ。





しかし、いざ作業に入ると、切り倒した木の処理に困ったという。
道もついていない場所からの倒木の搬出は、素人集団では至難を極め困り果てた。
結局、森整備公社の協力を仰ぎ、なんとか整備することができた。
主に月見さんたちが担当したのは、2000平米の山頂広場と登山道のうち、山頂付近の作業道と交わる部分から尾根を通って登る道の再整備などだ。




月見さんたちの会では、今年も、第2回のツリークライミングを開催したいと思っている。
昨年ツリークライミング用に整備したコナラに虫が入っており、木が弱り倒木の危険がある為、再度ツリークライミング用の木を整備しなおすことを考えている。




 また他に、この整備が終わった『高照峰』を観光でPRしたいとも思っているのだそうだ。
この山は、吉川英治の大ヒット時代小説『宮本武蔵』の作中で、逃げた武蔵を沢庵和尚とお通が山に探しに入り、笛でおびき出して捕まえたというエピソードで使われた『高照峰(たかてるみね)』のモデルで、作中でも、同じ漢字で読みが違うだけで出てくる。




宮本武蔵に関する観光開発も、古町中心地のみの限られたエリアとなっている為、もう少し広く回遊してもらうためにも、『高照峰』のトレッキングルートを上手にPRして、観光客に山頂まで登ってもらい、そこから吉川英治になった気分で、宿場町大原宿の古町市街地を望む眺めを楽しんで欲しいという。




 今後の会の活動方針については『高照峰』がおおよそ一段落したため、どうするか話し合ってはいないとのことだが、月見さん個人の希望としては、関ケ原の戦いまで運用されていた山城跡の竹山城跡の整備をしたいらしい。
史跡調査の際に専門家から、切岸や畝上竪堀の遺構が綺麗に残っている、とのお墨付きをもらっている城跡で、「これから山城についての勉強もしたい」ということ。
まだどのようになるか分からないが、私も、整備が終わり、竪堀群が綺麗に連なる姿が浮かび上がった竹山城に、遊びに行けることを楽しみに待ちたいと思う。

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