なのはなファミリー(特定非営利活動法人ハートピー)
理事長 小野瀬健人さん
勝央町、国道429号線の沿線に、2008年に閉校した古吉野小学校の跡地を利用した「なのはなファミリー」がある。
この「なのはなファミリー」は『ウインターコンサート』などの活動で有名だが、実際は、どのような施設か、知らない方が多いと思う。
皆さんは、摂食障害をご存じだろうか?
厚労省の『e‐ヘルスネット』にある説明では、『極端な食事制限と著しいやせを示す「神経性食欲不振症」と、むちゃ喰いと体重増加を防ぐための代償行動を繰り返す「神経性過食症」とにわけられます』とある。
このように、拒食症や過食症などと言われる症状が、よく知られる摂食障害だが、治療については、対処的しかないことが知られている依存症のひとつでもある。
この摂食障害を、集団生活や共同作業、そしてミーティングを通して回復につなげる活動をしているのが、『特定非営利活動法人ハートピー』の運営するなのはなファミリーなのだ。
今回は、そのなのはなファミリーを運営する『特定非営利活動法人ハートピー』の理事長で、「なのはなファミリー」代表の小野瀬健人さんに話を聞いた。
来年、喜寿を迎える小野瀬さん、本業はジャーナリスト。取材をして特集記事を書くという仕事だった。あるとき摂食障害について取材を行い、その実態を知ったことから、この摂食障害とも関わるようになったのだそうだ。
摂食障害は、他の依存症と異なり、食事という生活と切っても切り離せないものが依存対象となっているという意味で、回復することが最も難しい依存症となるのだという。
その摂食障害から、回復をさせていくということを模索していく過程で、欧州には回復専門施設があり、普通に生活できるレベルまで、回復している人が多くいることを知る。
そこで行ったのが、ヨーロッパから著名なカウンセラーを招へいし、摂食障害の子供を持つ保護者に紹介をして、子どもたちと共に、カウンセリングを受けたりミーティングを行ったりするということ。
しかし、開催してみると、摂食障害の子供を抱えた保護者が自らで運営することが難しく、小野瀬さんが、運営に携わるように、ならざるを得なかった。
しばらくの間、東京を拠点として、このような活動が続いたが、全国からの問い合わせが相次ぐなどした結果、西日本にも、拠点を作ろうという話になった。
その際にボランティアで、活動に協力してくれていた人の繋がりで、美作に拠点を構えた。これが岡山県北と小野瀬さんの関りの最初となった。
そして、その拠点が発展したのが、今の『なのはなファミリー』となる。
小野瀬さんは、今もジャーナリストの仕事は休止中で、365日、自分の時間もなく、なのはなファミリーに時間を注いでいる状態だ。
現在の、なのはなファミリーでは、音楽や演芸、スポーツ、農業作業を行いながら、コミュニケーション能力の向上を図り、グループミーティングで心のケアを行う。
農業作業では、季節の野菜、桃、水稲栽培を行う。
特に、桃は木熟桃として、完熟に近い状態で収穫することで、糖度15度の甘みで安定した桃として、かなりの人気となっている。
今後は、研究機関と連携して、桃の氷温保存を行い、季節関係なく消費者に届けられるよう試行錯誤しているそうだ。なのはなファミリーの運営は、入所者の保護者の負担金と、このような農業収入から成り立っている。農業が高収益化すれば、保護者の負担軽減にもなり、より多くの人に利用してもらえる環境ができるといった理屈だ。
音楽や演芸では、地域のイベントなどに積極的に参加して住民との交流を図っている。また、年に一度、『なのはなファミリー ウインターコンサート』という単独コンサートも、毎年開催する。今年の『なのはなファミリーウインターコンサート』は、クリスマスイブの日、12月24日13時から、勝央文化ホールで行われることになっている。
また、地域の運動会なども、若手不足により、なのはなファミリーの入所者がいなくては、成立しなくなっている。
なのはなファミリーの摂食障害の回復プログラムを受けることで、結婚し子供を授かった卒業生や、社会復帰して医師や弁護士になった卒業生もいる。
小野瀬さんは、まだ夢のような段階だが、先々は、このなのはなファミリーで実践してきたプログラムを、行政、社会福祉法人、医療法人など受け入れてくれる組織があれば、全国に広く提供したいのだという。
そのためにも医療機関などと連携し、しっかりとした根拠を持ったプログラムにしたいのだそうだ。
岡山県北に来て、『なのはなファミリー』を立ち上げて20年。
今では、摂食障害の子供を持つ親御さんが、岡山県北の地を目指すまでになっている。
卒業生が、岡山県北で回復をし、県北のいい思い出をもって、帰郷し、幸せな人生を歩んでいく、そこに寄りそう小野瀬さん。
ぜひ頑張って継続して欲しいものである。