「いってきます。」
まるで遠征に行くかのように息子は新しい居住地へと出発。息子同様私も新しい暮らしがこれから始まる。
のはずだが、ふと部屋を見ればいつもの服はハンガーにかかったまま、机の上にも本やノートが勉強中のように散らばってる。物を整理して押し入れにしまったり、次に送る物をダンボールに詰めてから旅立ってもらう予定だったのに!いやはや息子らしいわ。
約一週間後に送る荷物のことを考えるとちょっとだけため息が出そうになるが気を取り直して買い物に出かける。
スーパーで息子が卒園した幼稚園の体操服を着た子どもを見かけた途端、ブワッと、涙があふれ出しそうになったけどぐっと目の奥に押し戻す。
いかん、いかん、初日からこれでは。
レジで明るい店員さんの笑顔に心を慰められて帰宅。
しかし人間とは環境に慣れる動物なのか、あっという間に息子のいないのが日常の生活に。
いないんだけど息子の持ち物が至る所にあるからひょっこり帰ってきそうな変な感じ。
娘も、
「長い遠征に行ってるみたい。」
と、言う。
そうそうそんな感じ。
最初は息子がいた時と同じ量のご飯を作っていたからいつもの半分の量で十分。調理の手間が減って、こりゃ楽だね。
少し楽になった生活を謳歌していたけども
ママ友にスーパーで会って
「○っちゃんもついに行っちゃったんだね」
と何人かに言われているうちにまた少~しだけさみしさがよみがえる。
さて、息子の方は寮にてレンジやオーブントースターを駆使してご飯作りを頑張っているようだ。
麺をレンジで茹でてパスタを作ったり、冷凍ほうれん草、鮭フレーク、チーズをご飯にのっけてオーブントースターでドリアを作ったり、などなど数々の料理を作っている。
ある時は自転車で遠くの業務スーパーに行き食材をまとめ買いして
「これで一週間買い物しなくても大丈夫。安かった。」
と電話で興奮気味に話す。
オンライン授業中、自分で買い物に行ったり料理のメニューを増やしていた甲斐があってご飯には困っていない様子。
栄養について家族ラインで写メを送って聞いてくるからもう少し肉や魚を食べた方がいいとアドバイスしたら肉料理の写メを送ってきた。
もうなんの心配はいらないわ、と思っていたら、なんと!生活用品をちまちま送ることに…
息子の新しい居住地は今我々の住んでいる所より田舎らしく、寮のふもとにスーパーが一軒あるものの他の買い物は十キロ先まで自転車をこいで行くらしい。
家族ラインの送ってもらいたいリストにゴムベラ、フキン、タッパー(大きめ)、洗剤、メープルシロップ、ホットケーキミックス、白ごまなどが名を連ねる。
そうか、我々の住んでいるこの地も田舎だけど暮らしやすい田舎なのね。
高校の入学式の時に、
「この3年間で自律を身につけてもらいたい。」
という話があったけど行った先によってはそうもいかないようだ。
トホホ、しょうがない。
リストにあった物を買いに行って送るとしよう。
(投稿者・Aguriさん)