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お寺や神社には、なぜイチョウや樫の木が多いの?

 この秋が深まる時期、短歌や俳句に『どんぐり』や『銀杏』を詠みこむ人も多くいます。
お寺や神社の境内を染める、イチョウの紅葉や黄葉は、確かに絵になりますし、樫の木から落ちるどんぐりも愛嬌があってかわいらしいので、題材となって当然です。
美作地域でも、大イチョウの名所を紹介すると、奈義町だと菩提寺や阿弥陀堂の大イチョウ、勝央町だと河原大イチョウ(天神社)真福寺の大イチョウ、津山市内だと長法寺、久米南町には誕生寺、美作市には作東に仏法寺、真庭だと福田神社や中和の城徳寺、後谷の観音堂などにイチョウの大木があります。
ここまでで、気付く人も多いでしょうが、大木の名所となっているのは、いずれも神社やお寺といった施設です。
実際に、どの神社やお寺でも、樫の木(シラガシ)やイチョウが多く植えてあります。

 では、なぜ、お寺や神社に樫の木やイチョウの木が多いのでしょうか?
これにも、ちゃんとした理由があります。樫の木やイチョウは、幹や枝、葉に水分を多く含んでいます。そのため、防火技術の進んでいなかった昔は、火災が起こった際の延焼防止のために多く植えられていたのです。

美作地域ではないのですが、京都の寺町にある本能寺には、天明の大火(1788年)という、18万の家屋が焼失した歴史的大火災での出来事として、以下のような話が伝わっています。

“本能寺境内の大きなイチョウの木の下には、逃げ場を失った数十人が身を寄せ合っていました。無慈悲にも炎は、寺全体を呑み込む勢いで迫ってきます。全員がまぶたを閉じて「もはやここまで」と観念したその瞬間、大きな木が勢いよく水を噴き上げるではありませんか。信じられないことに数十人は、この水のおかげでやけど1つ負わずに助かったとか。以来、この木は「火伏せのイチョウ」として大切に奉られるようになりました。”

このような話は各地で残っており、延焼防止に水分を多く含む樹木を植えることを、後世に伝えるために創作された物語なのでしょう。
今では、お寺や神社にあって当たり前のような樫の木やイチョウの木も、防火のため延焼防止エリアを確保するために植えられていたのです。

他にも、お寺や神社で、サンゴジュ、シイ、ナラ、モクレン、モチノキ、ツバキ、サザンカ、クロガネモチ等も、よく見かけませんか?
これらの花木も、水分を多く含む木となっており、やはり火災時の延焼を妨げる目的をもって植えられているそうです。
ちょっと『へー』というような感じの話ですね。
皆さんも、お寺や神社にお参りした際に、どのような花や木が植えてあるか、ちょっと気にしてみてください。案外、何か目的をもって、その花木を植えてある場合が、多いんですよ。

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