アットタウンWEBマガジン

日常のモノを観察し現代社会のエッセンス引き出したい

組み立て式の社会


壮大な作品は小さなモノを集めて


高本敦基さん(倉敷市下津井)は控えめに「シンプルに日常にあるものをたくさん集めると工業的世界観が生まれるのではないか」という。静かに話をした様子と真逆な、壮大な言葉。作品は、色とりどりの洗濯ばさみを約2万個使って作り上げたもの、大きなものでは石川県金沢市で制作したものは10万個使用したという。




素材の洗濯ばさみは色付きのものはポリプロピレン。白いものはポリカーボネートのものでいわゆる普通のものだが組み合わせは縦横で構成され一定の法則を持っているようだ、また積み上げ高さを表現するとともに高低を付けることによって流れるものを想像させるところが面白いと思う。「組み立て式の日常について考えてみる」とタイトルのついたものは、天井まで届く高さだ。




メッセージ性は告発や攻撃ではない


何かを訴えるものですか?と聞いたところ「私の作った作品は、メッセージ性もありますが、それは告発や攻撃ではありません。

大量消費社会をどう生きていくか自分自身に問いかけるものでもあります」と整然と並んだ洗濯ばさみの乱れた部分を丁寧に直していた。


拡大してみる日常小物と、距離を置いて眺める集合体の美しさの違いを体感できる。




丸窓からの景色に引き立てられる

「蒜山の雪景色の中、ピンクの洗濯ばさみを見てきれいだなーと思った」「私はその場の生活を楽しみたいです」と静かに話す。

それは彼自身の楽しみ方、美しさに対する感覚。




丸く切り取られた、晩秋の紅葉を背景に色とりどりの洗濯ばさみが並ぶ。

人工的なものを自然の中に置いてみる彼独特の表現は、さすがだ。大作も見ごたえがあるが小品もすてき。

その丸窓から見える景色がもうすぐ雪景色にかわる、季節は彼の作品の背景でどのような引き立て役をしてくれるのだろうか。

雪が積もる日が楽しみになってきた。



垂直やこちら側と向こう側


「垂直で何を感じますか?」と問うと、滝に見えたり、タワーに見えたりする作品は「那智の滝、塔のように精神性のあるものを表現できたらと思っています」と彼なりの答えを出してくれたが、私にもそう思えた。

バベルの塔のように、天にあこがれ、届かない天に向かい塔を建設し続け、崩れてしまったバベルの塔。

バベルとは「ごちゃまぜ」をも意味し、色とりどりの洗濯ばさみ作品にぴったりだと私なりにメッセージを受け取った。




カーテンのように空間を仕切った白い作品は、物理的なこちら側とあちら側とみるか、人の善悪、現在と未来、あの世とこの世?



美作三湯芸術温度でアートを満喫しよう


岡山県北で中学校の美術講師をつとめていた時代もあった。

彼自身、穏やかな少年時代を過ごしたであろうが、県北の元気の良い生徒たちのエピソードを話す。

その頃の中学生に彼の作品を見てもらいたい、「インスタ映え」と思うかもしれない、スマートホンで写真を撮るかもしれない。

でもそれだけではないアーティスティックな表現を感じてもらいたい。


1月13日まで、湯原温泉をはじめ湯郷温泉、奥津温泉で開かれている「美作三湯芸術温度」は、岡山県北の人たちをはじめ、県内外海外の方にもアートを身近に感じる事ができる。2016年に引き続き今回2回目。25カ所 24人のアーティストが作品を展示している。「岡山県がアートに包まれることで、大きな人の流れが生まれ、温泉地の可能性を広げて、美作地域の持つ歴史や風土など魅力の発見へとつながることを願っています」と、美作三湯系術温度のキュレーターを務める、奈義町現代美術館館長の岸本和明さん。

私は、三湯全てを、まわってみた。

どこも、どの作家も魅力ある渾身の作品を展示している、現代美術作家がこれだけ揃うことはかなり贅沢なことだ。

これをきっかけに現代美術を、また岡山県北の美しい自然や文化を一人でも多くの人に知ってもらい、愛していただくことを願ってやまない。

この記事への問い合わせは、ライター武本まで。

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