陶芸作家・米山千晴さん
おとなしい第一印象
陶芸を始めて12年。「青と白は地球人の一番好む色なんだそうです」とはにかみながら話す。
地の色が真っ白ではない陶器を取り出してくれた。
とても目に優しい白、ブルーも派手さのない落ち着いた色だ。
ストライプほぼまっすぐではみ出しもなく、小さな柄も白の上にのせられている感じさえする。
口の重い千晴さんに、作品の工程を聞くと彼女の思いが少しずつ伝わってくる。
粘土は磁器と陶器が混ざっている、京都の半磁器の土を使っている。
青色を出すのは呉須という陶芸用の絵の具だ。粘土で形成をし、素焼き、色を入れ、釉薬を使う、すべすべとした感触を大切にして色をきれいに見せるために透明釉を使う。
すべすべした感触が好き
その後本焼きになってくるのだが、その釉薬の話の時に千晴さんの真摯に陶芸に向き合う姿勢を見たような気がした。
「岡山県なら備前ですよね」と私が不意に言った一言で彼女の意思を感じた。
「私は備前はあまり・・・」と。
備前焼は岡山県の誇れる焼き物だ、ゴツゴツとした男勝りとも思える力強い感触や重みは岡山県人になじんだものだったから、少なくとも私の中では。
「私はすべすべした優しい感触が好きで、釉薬を施すと傷もつきにくいんです」と話す彼女に少し圧倒された。はじめのおとなしそうなはにかんだ千晴さんはもういなかった。
粘土で形成するときに、作るものとデザインは決まっていて、目指しているものがはっきりしているという熱意がだんだん伝わる。
「青い線などもはみ出さないように少し溝を作っているんですよ」正確な青が入っているのだ、きっとっても几帳面な人なのだと、私のほうがどんどん惹かれていく。
スカートピンや髪留めも主張の少ない白と青が基調で、ボタン柄などの部分にオレンジ色やピンクがほんの少し入ったものでは「ピンクを使うとなんだかザワザワします」と心の内をだんだん話し始めてくれた。「私のパーソナルカラーはピンクなんですよ」という私。
決して否定はしないが、ピンクを使うことに「ザワザワする」という千晴さん。
地道に作品で主張する
千晴さんは長女として育った。
私の知る限り堅実な人が行く大学に行き学んだ。
弟がおり彼も美術方面の道を選び進んでいった。
長女の千晴さんがあってこそ、今の千晴さんだと思う。
まじめにシンプルない生き方をしている、そんな彼女の作品は彼女が彼女らしく作るから彼女の主張を表現しているのだ。
押しつけがましくない、が自身に妥協もないある意味、彼女の頑固さが作り出し作品が話を聞くほど好きになっていく。
「作ることで、自分の中でバランスをとっているんです」。
千晴さんのファンも多い
2月24日に美作市福本、遠藤酒造前空き地で開かれた「ヨリビト」に出展した。
千晴さんの作品を熱心に見て、ペンダントを購入した同市内の50代女性は「ストライプの作品が好き。
白とブルーがやさしいですね。
箸置きや梅の小さな梅の柄がついたものに春を感じます」と早速ペンダントを身に着けていた。
その時の彼女がお客さんと話す笑顔や作品を見たときに、心が温かくなったのはなぜだろう。
(取材ライティング・武本明波)