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中和(ちゅうか)の自然と共に

真庭市中和地域 高谷 裕治さん

 真庭市の最北地域の一つでもある旧中和(ちゅうか)村。
鳥取県に隣接し、こんもりとした津黒山を頂く自然豊かな中和で、昨年秋に酒造免許を取得して、自然栽培の米を使い、中和の水で、自然酵母の自家製『どぶろく』を製造している人がいる。
2012年に千葉県から、ここ中和地域に移住してきた高谷さん夫婦だ。




 どぶろくといえば「甘酸っぱい」というイメージがあるが、高谷さんの『どぶろく』は、アルコール分が高めで、やや辛口のスッキリしている飲み口が特徴だという。
初出荷はこの春ということで、まだ市場に出て間がない。それにも拘わらず、すでにリピーターもいるのだ。熟成期間の長さと原料の米の味、そして水と酵母のバランスによって味が変わってくるのだという。




米の品種は、安来原産の亀治という品種を使っている。見た目は穂が高いのが特徴で、病気に強く、肥料が少なくても一定の収穫が期待できる、自然栽培に向いた品種だそうだ。
粘りが少なく、さっぱりとした味で香りが強い、食用にも酒の仕込み用にも使われるという。




水は、津黒山の伏流水をボーリングで汲み上げている共同井戸。岩盤を打ち抜いて汲み上げる水は、表層を流れる水とは異なる性質の水だ。それに中和の自然に生きる酵母とが他の地とは違う風味を生み出す。
そこに、通常30日程度の発酵期間を、倍の60日まで長くすることで、発酵と熟成を深め、アルコール度が強いやや辛口のスッキリした味を実現している。




500mlが2700円と、ちょっといい値段ではあるが、自然栽培の原料と自然酵母を使った『どぶろく』は多くはなく、その中では安いほうだという。
近所の方に聞くと、「昔、内緒で作って飲んだ味を思い出す」とか「思ったより、きついね」等という感想だったそうだ。




 高谷さん夫妻が移住してきてから十数年。1次産業である農業を主体に屋号として「蒜山耕藝」を、2014年からは食事を提供する「蒜山耕藝の食卓 くど」を立ち上げ、2次産業の加工業、そして3次産業のサービス、販売業も行う、6次産業化に取り組んでいる。自らが加工するだけでなく、原材料を提供し、加工品を委託製造もしてもらい、『くど』やネット販売で、米や野菜、そして加工品も直売している。




 この『どぶろく』や他の加工品で蒜山耕藝や中和のことを、もっと多くの人に知ってもらって、関心を持ってもらいたいと思っているのだそうだ。
田舎暮らしは、自分達で何もかもしないと地域環境を守れない。それが生きている実感を味わえる中山間地の魅力でもある。
しかし、中和に限らず、真庭市北部は過疎化が進みすぎているため「中和の風景を維持することも、ままならなくなるのではないか」との思いもあるのだ。
中和をもっと知ってもらい、中和まで来てもらい、そして、これ以上人が減らないように、そして可能であれば少しずつでも住む人が増えていけばという思いもある。




 そんな活動の中で、今年の6月には、工場オープンデーを設けようと考えている。
実はすぐ近所に、地ビール醸造所がある。そこと一緒に公開イベントをできればと考えているそうだ。
どぶろくだけでなく、蒜山耕藝で栽培した野菜や穀物なども、中和の自然を身体で感じながら味わってほしいという。
また、蒜山耕藝の食卓「くど」でも不定期営業ながら、酒販免許の申請を行うという。




こちらでも近々販売できそうだという。ホームページもあるが、余り更新が出来ていない為、営業日やイベントなどの最新情報はInstagramへ投稿しているのでチェックして欲しいとのこと。
ただし、まだ始めたばかりで200㎏の醸造設備しかないため、販売できる量も限られている。また、本格的な冷蔵設備も無いため、夏までには概ね売り切ってしまわなければならない。

 移住してきて、今では約6町の農地で農業をしながら、地域活性化のため創意工夫をしながら6次産業化を頑張っている。
これからも、まったりとした心癒される中和の自然風景を守り続けるためにも、高谷さん夫妻には頑張り続けて欲しいものだ。

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