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心を紡ぐ一年にひとつの逸品

ニュー三楽園 池田澄子さん、近藤明美さん、安東珠生さん
サンタフェの香りがしてくるようだ、赤い土や乾いた風のが作り上げた織物。

サンタフェでスパニッシュ織を引き継ぎサンタフェ市の無形文化財でもある、コーデリア コロナドさんに直接習ったという、池田澄子さんは「約20年前になります。織物の見本を見た時は、きれいだなと思う反面、私には無理だ!と思いました」と振り返る。




ニュー三楽園の利用者さんの自立の一環にスパニッシュ織を取り入れたいとの意向で取り組み始めて、今では基本の幾何学模様を大切にしながらストーリーがある作品を制作する池田さん。
「普通のものを織るよりも伝統的なものを取り入れながらいかに独自性を出すかを考えています」。




近藤明美さんはいつも笑顔だ、はつらつとしている。
近藤さんは5月の第50回津山工芸展に「YEII(ナホバの精霊 イエイ)」を出品。見事、岡山県知事賞に輝いた。
「賞をいただいた時にはピンとこなかったが、とてもうれしく光栄です」ニュー三楽園で作品に取り組む池田さん、近藤さん、安東さんは施設の仕事をしながら制作している状況で「なかなか無心になれないです」と笑うが一年かけて1作品創るのがやっとだと言い「工芸展に出すという目標があるので前向きに取り組んでいます」とほほ笑んだ。




近藤さんが使用する原毛を持ってきてくれた「がさがさとした感触で重量感があるでしょ、これは輸入しているのですが色も独特の色合いです」そして「アジアの雰囲気がする作品を作るのが好きです」笑顔がとてもすてき、そして近藤さんのフットワークの軽さ、目の行き届きようも素晴らしい。




実は、ニュー三楽園におじゃましたのは、池田さんたちに会うのも目的ではあったが、利用者の方々がどのように取り組んでおられるのかを見たかったから。
「みなさん、ログハウス風の工房に来られると、気持ちが落ち着かれるのかとても穏やかになられます」糸巻に取り組む人、淡々と織機に向かう人、さき編に使う布にはさみを入れる人、さまざまな作業に向かいながらおだやかに過ごせる環境が作られている感じがした。
そして無口な利用者の方に向き合う池田さんたちのこまやかな心遣いに感心し、さき編みに取り組む姿に見入ってしまった。

みどり、ピンク、赤っぽいチェック、むらさきなどさまざまな裂いた布を縦糸に織り込んでいくさき織に向き合う真摯な姿勢。できた作品は肌触りが良く、吸水性も抜群でお風呂や玄関のマットに最適。
また世界に一つしかない模様を楽しめる。

さき織だけではなく、スパニッシュ織の腕をあげた利用者の方も多くいるそうだ。




工房を出て、池田さんがニュー三楽園のバラのお庭、イングリッシュガーデンの散策に誘ってくださった。
白、ピンク、赤、オレンジ色など色とりどりのバラが咲き誇る「少し時期は過ぎましたが、利用者の人たちの作業のたまものです」。
そういえば先ほど案内されたロビーにもスパニッシュ織が壁にかかっていたり、広げられていたり。久米南町下弓削に、異国の香りのするサンクチュアリを見つけたような気がしてきた。取材当日、安東さんにお会いできなくて残念だった。

(取材ライティング・武本明波)

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