津山市を中心に出張マジックショーを行い、様々な人達を楽しませる同好会がある。それが『津山奇術同好会』だ。
現在会員は8名。老人福祉施設や子ども会などを中心に、訪問して披露している。他にも、鶴山公園の桜まつりなどにも参加しているので、見たことがある人も多いと思う。
活動の中心は、津山、鏡野、美咲、勝央などの津山近郊となり、定期的にショーの依頼があるため、活動も積極的になっている。
今回は、『津山奇術同好会』現在の会長、大天(だいてん)嘉行さんに話を聴けた。大天さんは、74歳。鳥取県智頭の出身で、東京に進学し、美咲町の役場職員として帰ってきた。現在は奥さんと、奥さんの母親の三人暮らしだ。
家庭では、奥さんはマジックに興味がないらしく、一切披露することもないという。公演の時も「ボランティア」に行ってくると、普通に家を出るだけとのことだ。
そんな大天さんが会長を務める同行会の説明から。立ち上げは、30年前の平成6年。津山市の生涯学習教室でマジックを習っていた仲間20人くらいで、カリキュラムの終了と共に立ち上げた。
それが、高齢化などが原因で、亡くなる方や施設入所で活動ができなくなる方が徐々に増え、ついには、一昨年には会員が5名まで減ってしまった。
そんな中、他のマジックの同好会と一緒にやろうという話があり、合併することで9人まで増えた。今は、先記したように一人減って8人となっている。
活動は、月に1回から2回の練習会を行うことと、訪問しての公演となっている。
公演は、可能な限り都合のつく会員、全員で行く事にしている。そのため、少ない時でも3~4人で向かう。また、練習会の方は、新しいネタの練習や情報交換などが主で、会員同士のコミュニケーションの場にもなっているのだそうだ。
新ネタなどは、自分たちで考えるのか?と聞いたところ、ネタ本から情報をいれたり、マジックの小道具を販売している業者の、実演販売会などに行った時に、小道具と共にテクニックのコツも一緒に仕入れてくるのだという。
中には、こんなマジックをしたいということで、DIYで自分達で小道具を作ったりもすることがある。
昔は箱に入り、人が消えたり、衣装が変わったりするような、大がかりなイリュージョンも行っていたのだが、公演場所の広さや観客との位置の関係、公演場所までの搬送の問題もあり、イリュージョンは行わなくなった。そのため、DIYで作成したイリュージョン用の箱はお蔵入りとなっている。
現在は、ロープ、ハンカチ、帽子などの小物を使ったマジックを中心に披露しているのだそうだ。しかし、トランプやコインといったハンドマジックは、ステージ環境が整わないと、一定数の観客がいる中で、分かりにくく見栄えがしないという理由で行っていないのだそうだ。
それでも、ステージ環境の問題は大きく、横から見えて、トリックがバレるなどということもある。また、昔からあるトリックをする場合は、仕掛けを知っている人がいる場合もあるのだという。
そこは、「種も仕掛けもありませんが、仮に種が見えたり、知っていても、黙って拍手する。知ってるとか、見えたは禁句です。それが、人のやさしさです。仮に、そういったことになっても暖かい目でご覧ください」などとトークを駆使することで、その場を笑いに代えるのだ。
大天さんは、「特に、練習会で集まっても、しゃべりの勉強はしてないんですが、公演の回数をこなすと、色々な状況に出くわすので、割とそういった機転が利く言葉がストックされてくるんです」ということだ。
会の運営は、会費2,000円と公演先から車代などの謝礼が出ることもあり、それで賄っている。
経費も、普段の茶菓子と講演に行くときに車を出す人への燃料代くらいなので、充分やっていけるのだという。
依頼が多いのは、津山市の社会福祉協議会ボランティア活動センターや津山市文化協会などに登録をしているからだという。津山市ボランティア交流会にも積極的に参加している。
出張マジックショーの公演は、20~30分程度から1時間以上のものまで、依頼者の内容に合わせて対応してくれるという。この辺りも依頼しやすさの要因なのだろう。
もし、活動に共感して、呼びたいという人がいれば、津山市の社会福祉協議会ボランティア活動センターに依頼すれば、対応してもらえるとのことだ。
これからも、『津山奇術同好会』の仲間達と一緒に、マジックを駆使して、たくさんの人達を喜ばせて、津山近郊を盛り上げていって欲しいと思う取材となった。