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郷土玩具の『百々人形』を守り伝える。

北和気郷土資料館館長
百々人形保存会会長 福井正さん

 美咲町百々(どうどう)。以前は柵原町百々という地域で、1933年(昭和8年)から作り始められた郷土玩具の土人形がある。それが、『百々人形』とよばれる土鈴人形で、デザインは天神さまやダルマなどが多いという。土鈴人形とは、土を焼いてつくった人形の中に玉を入れ、鈴としたもので、古くは魔よけとされていた、郷土玩具の土人形は土鈴となったものも多い。





 今回、紹介する『百々人形』は、京都で土人形作りを学んだ福田さんという方が、百々からほど近い地元の土を使い、制作をしたのが始まりだ。その後、人形作りは、二代目の中西さんが引退をした時点で一旦途絶えることになる。一部で中西さんの手伝いをしていた人たちが、数年間は制作していたものの、これも途絶えた。
そんな中、2009年(平成21年)、郷土の文化を守り広めたいと、『百々人形』を復活させるため、数人が集まった。





話を聞いた『福井 正』さんは、この『百々人形』の復元伝承活動を立ち上げた中心メンバーで、百々人形保存会の会長を務めている。
1947年出生の、生まれも育ちも美咲町。役場に勤め、教育委員会を経て定年で退職し、退職後に請われて北和気郷土資料館の館長に就任する。それを機に、百々人形と関わっていく事となった。





復元に当たり、まずは、かつて制作を行っていた工房に行ってみたが、備品も手入れがされてない状態となっていた。中でも、重要な人形の型などは残っていたものの、石こうの一部が剥がれるなど、表面がガタガタの状態で使えなくなっていたという。
そこで、復元に当たって、型作りから始める事となった。
まずは、保存会を立ち上げ、そこへ5~6人の仲間が集まってくれた。





その中に、中西さんを手伝った経験者がいたため、指導を仰ぎながら、復元に向けて動き出せた。また、幸い、民間の財団を利用した補助事業を受けられることとなり、復元の費用は何とか工面できることとなった。郷土資料館にある工房がその復元した工房となる。





 現在の保存会のメンバーは男4人女8人の合計12人で、60代から70代のメンバーで活動している。
現在の活動内容は、、学校や児童館、公民館、福祉施設、地域のサークル、老人会などへの出張教室と、美咲町内で新たに生まれた赤ちゃんに人形をプレゼントする活動。出生届を出しに来た方に、数種類あるデザインの中から、好きなものを一つを選んで持って帰ってもらう。





10年続けてきた活動なので、美咲町で生まれた10歳以下の子供は、それぞれ自分の土人形を持っていることになる。
この度、進呈した百々人形の数が1000個を越えたというが、当初年間120個ほどプレゼントしていたものが、近年は60個台の進呈数と寂しくなっているのが残念だという。





 そして、もう一つの活動の出張教室。
小学校、福祉施設などを始めとして、様々な所に、遠くは玉野までと岡山県下で幅広く出張教室を行っている。「原則、日帰りで行けるようなところは、出来る限り行きたい」という程の意気込みだ。
この教室は、1度の依頼で2回の教室を行う事になる。
最初の教室では、粘土を捏ね、型にかぶせて人形を作り、型から人形を取り外すまでを行う。ここでは、比較的簡単に作業できるように、簡単なダルマの型で体験をしてもらう。
それを窯で焼き、2度目の教室では、絵付けなどを行うのだ。





人形作りでは、粘土を型から外す作業を行うが、その作業が難しいらしく、中には、何度も失敗する人もいるのだそうだ。それでいて、あまり粘土に時間をかけすぎると、硬くなり成型が出来なくなるなど、思っているより難易度は高い。
また、絵付けでは、普段から化粧に慣れている女性の方が上手らしく、出来上がった顔は、どことなく本人に似ているものが多いという。




また、作品の傾向として、女性が男ダルマを作った場合は夫の顔に似てくるという。また、男性が姫ダルマを作った場合には、奥さんに似てくるのだそうだ。
「愛が深いからそうなるのか、普段から見慣れているからそうなるのか」といった面白い話を聞かせてもらった。
とは言え、出張教室で呼ばれる機会の多くは、学校などだ。
毎年、子どもたちの卒業制作としている学校もあれば、特定の学年で文化祭の前に作り、発表する学校もある。教室を行っている多くの学校では、卒業までに一度は人形を作るのだ。自分で作る世界で一つだけの郷土玩具となる。





 今回の取材を通して、体験学習する児童は、在学していた記念としてだけでなく、その体験が、郷土の文化を守り伝えることに関わっているということを成長していく過程で分かってくれるのではないかと感じた。保存会の活動としては、会を引っ張ってくれる次世代のリーダーを養成したいとのことだが、福井さんご自身も、まだ70代。年齢的にも若いので、しばらくは、このまま保存会を引張り、今以上の一層の活躍を期待したい。

是非、地域の為に頑張ってください。



《出張教室のお問い合わせ》
●全2回、1回90分程度で、型抜きと絵付けの2回で完成です。1回で完成させる場合は、素焼きの人形に絵付けをします。
TEL:0868-64-0801(福井さん)

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