津山ラグビーアカデミー代表
津山高専ラグビー部コーチ 野中健志さん
ラグビーのワールドカップが開催されたのが昨年。そのおかげでラグビーも多くの人の知るところとなり、今は基本的なルールを知る人も多くなった。
とはいえ、まだまだ野球やサッカーに比べれば認知度は大きく見劣りする。
またラグビーの細かいルールをまだ知らない人が多いのも事実だ。
「オフザゲートって何?」「タックルが成立したらボールを放さないといけないのに、タックルを受けたあと、なぜ立ち上がってボールを持って走れるの?」実はラグビーのルールはかなり細かいのだ。
そんな細かいルールを無視してゲームの流れや雰囲気を楽しむのも、ラグビー観戦の醍醐味の1つだろう。
なぜこんな話から、書き始めるのか?
それは今回取材したのが、津山ラグビーアカデミーの代表で津山高専ラグビー部コーチでもある野中さんだからだ。
大阪生まれの野中さん。大阪と言えば花園ラグビー場もあるラグビーのメッカ。
小学校1年生の頃からラグビーを始め、高校時代は京都の八幡高校で、全国でも有名な伏見工業や花園高校などと戦いベスト8までコマを進めたチームでプレーをしていた。
そんな野中さんのお仕事は、津山で誰もが知っているグラスハウス。そこのインストラクターだ。
20年位前に津山に移住し、今は、金曜日は仕事が終わると子供たちにラグビーを教えている。
津山ラグビーアカデミーでは、幼児~中学生を対象にタグラグビーやタッチラグビーを、顧問のような形で参加している津山ラグビースクールでは幼児~小学生までと、ジュニアラグビースクールでは中学生をフルコンタクトの12人制ラグビーで、またコーチとして津山高専のラグビー部でも指導している。
ここで「タグラグビーって何?」と思った方に簡単に説明すると、腰にタグをつけ、ボールを持った選手がタグを取られたらその場で止まり、味方にパスをする事でプレーが続いていく、接触をなくした安全なラグビーのことだ。
安全性と運動量の多さから、近年では学校教育などにも取り入れられている。
そのタグラグビーを津山ラグビーアカデミーでは導入している。
ラグビーの基本になる、パスやキャッチなどのハンドリングスキルを向上させ、何より相手をかわしながら進むランニングスキルを高める練習として、ラグビースクールに通っているメンバーも多く参加しているそうだ。
初めての子供でも、鬼ごっこをしながらゴールラインを目指す感覚でできるため、普段運動をしない子でも始めやすい。
ラグビーアカデミーが始まったのが、2015年の秋。WRワールドカップ イングランド大会が開催されて数か月後のことだ。
この大会初戦の、ラストプレイでジャパンが、世界3強の一角でもある南アフリカのナショナルチーム『スプリングボクス』を相手に、ドラマのような劇的なトライでの勝利を挙げ、世界中で奇跡と報じられたこともあり、国内でもラグビーへの注目が一気に高まった。
ちょうどその時期、野中さんの同期のNTTドコモの監督を呼び、ラグビーイベントを開催した際に160人もの参加があり、その流れからアカデミー立ち上げへと至った。
しかし、思ったより参加者が少なく最初は苦戦したが、それでも年を重ねるごとに参加者も増え、活気も出て来たという。
月に数回、大人も入りゲームを行うことで、一層ラグビーの楽しさを知ってもらい、少しでも子供たちにラグビーに対する興味を持ってもらおうと活動をおこなっている。
「試合に勝つという目標をもってラグビーをするのもいいのですが、子供のうちは、まず、一人ひとり楽しくふれあいの中で、ラグビーができることを大切にしています」
ということ。
費用についても、定期的に来る子供には傷害保険の加入代金と照明・グランド使用料のみを徴収し、会費も特には設けていない。
義務化の様にせず、気軽に遊び感覚で参加して欲しいとの思いからだ。
野中さんが津山に来た頃は、小学生のスクールはあったものの中学生のジュニアスクールはなく、継続的に育成を行う事が難しかった。
ラグビーが盛んな地域で育った野中さんからすると、津山に来た当初は、大きな寂しさを感じたそうだ。
現在では中学生のスクールも立ち上がり、以前に比べ環境は良くなってきたものの、今後の育成についても課題は多い。そんな環境が良くなるために、少しでも多くの人にラグビーの良さ、楽しさを知ってもらい、好きになって欲しいのだそうだ。
地域とアカデミーやスクールなど関係者が一体になって選手をサポートし、将来は岡山県北地域から日本代表のジャパンに呼ばれ、WRワールドカップに出場する選手が出ることができたら最高だという。
大きな夢に向かって、今も一歩ずつの前進が続いている。