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短歌への誘ひ
哀しみの短歌(うた)は詠むまい前向きに前だけ向いて夕焼け見つむ /井上 襄子
●人は誰も哀しみを以て生きているが、作者は敢えて前だけ見て生きたいと。
院の紹介状持ち寒風のホームに立てば朝日昇り来 /横林 明美
●作者は大病院への紹介状を持ち、不安な気持ちで駅のホームに立っている。
土下座して殿様迎えしイベントで古思い今を知るなり /三好 多恵子
●新見の土下座祭りに参加した吟行会での一首。初心者の初々しさがある。
遠き日の母の定番思ひだし姿鮨買ふ新見の祭りに /清水 美智子
●この作者も吟行会での新見の町に、母が作っていた鯖の姿鮨を見つけた。
*今月は秋が深まってきて短歌作りに熱心な作者の歌を集めた。
一首目は、まだ現役で介護の仕事をされている作者。哀しみに堪え前向きに生きようと詠む。
二首目の作者は病気への不安な気持ちを寒風で表現し、結句の朝日で明るい未来を暗示させている。直喩を用いない短歌の真髄である。
三首目は新見の土下座祭りに吟行に行き詠まれた歌。三句目イベントで、を秋祭りにとされては?
四首目も同じ新見への吟行会での出詠歌。新見の町並みで、昔懐かしい母が作って呉れていた、一匹丸侭使って作っていた鯖の姿鮨を見つけて思わず買ってきた。上の句に作者の母への想いが籠められている。総て秀歌である。
歌評 矢野 康史
●今月の短歌
短歌への誘ひ 歌壇 1月号
2019年12月04日