矢野さんの短歌や短歌教室の生徒さんの歌を毎月掲載中。
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短歌への誘(いざな)ひ
掌(て)の窪におさまるほどの一生(ひとよ)かなふかき皺の手しみじみ眺む/河野 澄恵
●一行に込められた人生詠。作者は小さな掌を見詰め、来し方を思い返す。
いつの間に背も丸くなり七十五歳亡き母に似る寂しき容姿(かたち)/花村 輝代
●人は誰も歳をとると知らぬ間に親に似て来る。寂しき は丸い背に似てか。
晩秋の紺碧の空ゆう悠と鳶の舞ふを長閑に眺む/萬代 民子
●この作者も美咲町に独り暮らし。悠然と舞う鳶の気儘さを羨んでいるか。
一張羅の小鉢並べて一人きりひとりぼっちのテーブル飾る/近藤 豊子
●この歌も独り居を詠む。男やもめはこうはいかないが女性は強く華やか。
*令和になり初めての冬を迎え、今月は奇しくも寡婦の作品ばかりとなった。
一首目は、。自分の生きこしを共に知る掌。その一生が収まるほどと詠み秀歌。
二首目の作者は病気の母を長く看取り、姑とご主人も看取られた。振り返ってみれば、鏡に映る自分の姿はいつの間にか老いた母の姿そのままと知る。
三首目は一人で畑仕事をしながら農家を守っている方。長閑に眺むは愛犬と暮らす余裕からか?短歌作りと、時々歌友たちと出掛ける山遊びが楽しみと聞く。
四首目は独り居ながらすべてに前向きな作者。寂しさを華やかさで乗り切ろうとされている。「一人きりひとりぼっち」のリフレインが効果的である。
令和二年一月二日
あさかげ短歌会 代表 矢野 康史
●今月の短歌
アフガンの
神と慕(した)はれし
中村医師
殺害の報に
地球冷え込む
矢野 康史