アットタウンWEBマガジン

オルゴール演奏家

津山オルゴールサークル 代表 川上正人さん

 皆さん、オルゴールの演奏家と聞いて、どんなものを想像するだろうか? 普通だと『オルゴール』はネジでゼンマイを巻いて、あとは、ゼンマイがほどける力を利用して、鳴ってくれるものと考えるだろう。ところが、そうじゃないオルゴールがあるのだ。
今回のアットタウンは、以前一度ご紹介した、津山市一宮の川上正人さん。前回は、自宅の一部を『オルゴールギャラリー 和(なごみ)』として公開する際に記事として取り上げたが、今回は、昨年から入手したという新たなオルゴール『手回しオルゴール』を中心とした演奏活動について、話を聞いた。
 ただし、それだけの理由だけではない。筆者の個人的な思いとして、前回の取材記事の内容が、余りにもオルゴールの仕組みや歴史についてが記事の中心となってしまったため、不評となったこともあり、今回はリベンジとして取り上げたいとの思いもあった。




 さて、早速『手回しオルゴール』を紹介する。
この手回しオルゴールは、レシートのような『ブランクシート』と呼ばれるシートにパンチで穴をあけて、楽譜とする。
昔からあるディスクやシリンダーを利用したものとは異なり、3分から5分の長い曲を演奏することも可能になる点が魅力だ。また人が手で回すため、スピードの調節も回す人の意思次第で自由に変化させることもできる。
掲載されている写真でも分かると思うが、『オルガニート』と呼ばれる手回しオルゴールは、卓上式とギター型があるのだ。




ただし、正式にはギター型は、『オルガニート』を心臓部に使って制作されたGARYUという商品ということ。このGARYUに限らず、オルゴールの世界では、心臓部に他メーカーの機械を使うことは多くあるようだ。これについて、オルゴール業界の権利関係がどうなっているのか分からないので、詳しく触れることは控えておこうと思う。このGARYUを用いた演奏が演奏会では人気だという。




実は、このGARYUを岡山県で所有しているのは、川上さんただ一人となっている。さらには、これを2台保有しているのは全国でも数人だという。その中でも20音タイプと30音タイプを、それぞれ両方持っているのは、今のところ製作者以外では川上さん、ただ一人だという。(30音→中国製の33音と『オルガニート』の20音の2台を解体し、一台にして心臓部が作られている。)





 この、『オルガニート』については、3年程前から存在を知っていたが、楽譜シートの種類が90曲程度と、メーカーから余り多く出ていなく、興味を持たなかったのだという。
手回しオルゴール会に所属する3名の方に楽譜の製作を依頼し、パンチ明け作業を川上さんが行うという方法で、曲数を増やせる事を知り、興味を持ちだした。
決定的だったのは、昨年2月に知り、5月に1台目を入手したGARYUの存在だ。
GARYUの演奏を中心とした構成にすることで、1時間30分以上の本格的なコンサートだけでなく、40分程度の短いコンサートの数も増えて来た。最近では、津山図書館でも40分2部制のGARYUを中心としたコンサートを行い、前半20人、後半10人と、一日で30人もの人を集めた。特に子どもたちはどこの会場でもGARYUに興味津々だという。




「誰か演奏してみたいですか?」と問いかけると、どこでも、ほぼ全員が「やりたい」と手を上げるという。
 そして、比較的高齢な方に人気なのが、こちらも最近入手した『鳥』のオートマタ。
こちらが、スイス製となっており、本物の鳥の羽を使用し作られているため、どこから見ても本物そっくりだ。仕掛けとしては、ゼンマイが鳥やくちばしを動かし、ゼンマイで動かされた鞴(ふいご)の先に仕掛けられた笛で鳥を鳴かせるというもの。
精密な加工を、是非一度見てもらいたい。





 最後に、川上さんから、あるお願いをされた。実は、前回取り上げた際に、演奏会に呼んでもらえれば、「謝礼は頂く気がないので気にせずに」と言った趣旨のことを書いていたが、今回の取材時に、御礼についてのお話を「準備頂けるのであれば頂きます」にして欲しいということだった。
出張演奏会を行うに当たって、燃料代などの諸経費やオルゴールのメンテナンス代なども高騰しだしていることから、以前のように出された謝礼をお返しすることも、やめるようにしているとのことです。
しかし、「いくらくれ」とか「御礼がないと行かない」とかの話でもない、とのことなので、出張演奏会に興味がある人は、謝礼の件も含めて問い合わせされてみてはいかがだろうか。

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