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ネットで流行る若者現代短歌

前回は、Twitterなどで投稿されているSNS短歌と呼ばれる現代短歌と、近代短歌や古典和歌との違いなどについて書いてみましたが、今回はこの若い人たちの間で流行る現代短歌について掘り下げてみようと思います。

若者の現代短歌はSNSを代表するネット上で流行していると思いがちですが、実はそれだけにとどまっておらず、現代短歌専門雑誌や歌集などの出版もあるのです。
また、他にも大学生を対象とした短歌選手権などが開催されたり、高校生が出場する全国高校生短歌大会(短歌甲子園)があったりと、静かなブームと言われていた短歌がしっかりと世間に認知され、定着しはじめているのです。

それこそ、SNSでこんな投稿がありました。
“若者に「もしかして短歌っていま流行ってるのかな?」って聞いたら「流行ってますよ!最近のシティボーイはスパイスカレー作るか短歌作るかですよ」と断言された。まじか。” 
投稿者は、短詩の書籍を発行する編集者です。その後の返信で自身が再投稿した内容がこれ。
 “ 10年前短歌書いてて「雅だね」と言われた私だが、このツイートが1万いいね超えたら短歌がまじで流行ってることを信じようと思う。” 
その結果として、以下の返信があっています。
 “1万どころかもうすぐ2万いいねということで私も今後「短歌は流行ってる」と断言します。” 

前号で紹介したが、今、流行の短歌では、どのタイミングで、どんな人が、どういった状況で、何を読んでいるのか、ということが分からなくても評価されているのが特徴です。このことから、その時の一場面であったり、思いや気持ちだけを詠んでいる人が多くなっています。これが、今の若者に強く支持される要因となっているのではないでしょうか。

しかし、世の全ての方が、若者の現代短歌を歓迎しているわけではないのです。
以下はネット上で見つけたブログです。

“短歌の文化芸術を想わず、古典から歴史も伝統も学ばずに、五句三十一音にあてはまるように言葉を並べた文章、例えば、「腹減った。今日のごはんは何だろう? あなたの好きなカレーライスよ」を(短歌)と呼ぶ者がいる。~中略~現代の若者の多くが「芸術性=ニヒリズムやシニシズム」と思い込み、自分が中心の半径2、3メートルの狭い世界の中で呟いて暮らしていることを、ブログ主は大変残念に思う。” 

確かに指摘はその通りなのですが、「若者短歌」はニヒリズムやシニシズムではなく、表現力の乏しさが起因していることが多く、例えばブログで紹介してあった「腹減った。今日のごはんは何だろう? あなたの好きなカレーライスよ」を「帰宅して カレーのかおり 満ち溢る 空腹こらえる 夕食の前」と変えるだけで雰囲気は大きく変わります。
まず、「帰宅して」を入れることで自宅だということが分かります。また「夕食前」を入れることで、夕方を描いているということも分かります。
当然、帰宅した時にカレーの香りが満ちていれば、自分ではない誰かが作ってくれていることも分かります。元の歌より格段に幅が広がっていると思いませんか。
しかし、表現の幅を広げることが、必ずしもいいわけではありません。
前号でも書いたように、表現の幅が狭いことで、逆に読者に自由な広がりを持って受け止めてもらえるからです。
私は、この一見、稚拙とも捉えかねない、この表現の狭さこそ、若者の間で短歌が流行する最大の要因だと考えています。
新しい文学としての現代短歌、中でもSNSを中心に愛好者を増やしている「SNS短歌」「若者短歌」と呼ばれる短歌の発展を期待しています。

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