最古の歌集と言えば『万葉集』。「万の歌を集めたもの」とも、「万世の歌を集めたもの」という意味ともいわれ、日本に残る最も古い歌集となります。
7世紀から8世紀に詠まれた歌を編纂されています。
この編纂者は、大伴家持という説が濃厚で、全20巻、約4500首もの歌が、年代、地域、身分などに分けて整理されています。
これまででもわかる様に、編纂の時代や編纂者など万葉集に関する情報のほとんどが推測となっており、確証は何一つないのです。
編纂年代については、作歌年月が明記されている歌で最も新しいのは、天平宝字3年(759年)正月一日の大伴家持の作となっています。これを根拠として、759年以降に成立したのは間違いないと言われています。
この編纂者については、それぞれの巻によって編集の仕方が異なる部分も多くある為、一人の編纂者が全てを編纂したとは考えにくいのではないか、と言われています。
その中でも、巻第十七から巻第二十までの間が大伴家持の歌日記のようになっていることをはじめ、巻第十六までに、大伴家持の父である旅人の歌やその身近な人の歌が多いことから、後半部分は大伴家持が編纂したのではないかといわれています。
歌に詠まれる場所が全国の至るところとなり、詠み人の名前が分かる者が約480人もいます。
そして、その身分も天皇・皇后などの皇室から貴族や役人、そして農民、旅人、防人(徴用された軍人)、乞食と、様々な人の歌を掲載しています。身分にとらわれない幅広さが万葉集をバラエティー豊かにし、他の歌集に見られない、後の世までも人々に愛される歌集になった要因ではないでしょうか。
また、『やまとうた』として形作られて間もない時期になるため、歌の表現の形式が充分に定まらず多様な歌体なのも特徴の一つです。
最も多いのが『短歌』57577と31音の形式です。次に多いのが『長歌』5音と7音を交互に繰り返し、5757577のように、最後に7音を加えて終わります。この際に5音と7音はいくら繰り返しても大丈夫です。その他にも575777の形態をとる仏足石歌体、577の形態の片歌、さらには、それを問答のように詠みあった旋頭歌など、見ているだけで楽しくなる程です。そしてバラエティー豊かなのは形態ばかりにとどまりません。歌を詠まれた場面も様々です。
互いに相手のようすを尋ねるための歌でもある相聞(そうもん)、人の死を悼んで作る挽歌(ばんか)、そのどちらにも属さない雑歌(ぞうか)など、それぞれの場面を詠んでいるのも特徴なのです。
これを読んだ読者の皆さんの中で、そんな万葉集の魅力を共有してもらえる方が出てくれば幸いです。