歌を読み上げる(歌い上げる)ことを披講と呼ぶことは、以前にもこのコーナーで、さらりと触れていたのですが、それを今回は、分かりやすく説明したいと思います。
披講は、近代以降の短歌会などでは、ほとんど行われませんので、伝統文化として古式に則り継承しているところのみで、とり行われていると思っていいでしょう。
歌会と披講会の違い、皆さん分かりますか?
まず、歌会とは?
集まり歌を詠んで、お互いに批評するのが歌会です。
それに対し披講会とは?
披講とは、新しく詠んだ歌を読み上げる(歌う)ことです。分かりやすくいうと、歌手がステージで歌を歌うようなものです。
それが、披講会となると、はじめは歌会のように歌を詠むところから、お互いで批評をし、最後は、節をつけて読み上げる(歌う)までを行うのです。
中には、平安貴族の衣装で行う披講会も多くあり、雅な雰囲気を楽しめます。
特に流觴(曲水の宴)などは、全国の複数の場所で開催されており、多くの見物客が詰めかけるなど、人気となっています。
また披講の歴史は長く、和歌の生まれた頃から、読み上げるカタチでの披露(披講)があったとされています。
それが、「披講」と呼ばれるようになったのは、鎌倉時代以降だと『星と森披講会』のHPに書いてあります。
ここを参照すると、和歌だけでなく漢詩の場合も、新たに詠んだ場合には「披講」というとのことです。
これに対し、「朗詠」は昔からある有名な漢詩に節をつけるので、「披講」とは区別されるとのことです。同じように、有名な和歌を口ずさむことも「披講」とは呼ばず「吟詠」などとよぶことがあるとのことです。
披講には、基本的に「読師(どくじ)」「講師(こうじ)」「発声(はっせい)」「講頌(こうしょう)」と呼ばれる役割があります。
「読師」「講師」「発声」は、それぞれが一人ずつとなっており、「講頌」は複数人いることが多いようです。たとえば、宮中歌会始では講頌は四名いるため合計七名となります。
「読師」はMC、司会・進行の役で歌道の重鎮が行います。
和歌の懐紙を広げて示したあと、2度、平音で語尾を伸ばし、和歌を読み上げる役が「講師」です。
それを受けて、和歌にリズムと音程を付けて歌うのが「発声」で、その第二句から合唱するのが「講頌」となります。
これらの曲(音程やリズム)について、今の所わかっている限りでは、室町時代の中頃の楽譜が残っています。しかし、これらは現在伝えられているものと、かなり違っています。
その中で、甲調・乙調・三重などの節の名前があるので、この頃にはいくつかの曲があったことがわかります。
このように、古くからの伝統文化として、今に続いている披講会ですが、残念ながら岡山県では開催されたことがありません。美作地域でも目にした事がある人は、ごく少数ではないでしょうか。
しかし、歌は曲にのって歌っているのを聞くことでこそ、価値が上がるのではないでしょうか。