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歌を詠む 歌を詠う

 先月号で、私が詠進した歌が掲載に至ったのですが、選者でもある矢野先生から、私の歌について、賛否両論あるとのことでしたので、私の歌を詠んだ意図を解説させて頂きます。

今回の掲載頂いた歌はこれです。

光さす 紅(べに)色映(ば)える 曼殊沙華
 薄ら寒(ざむ)さに まほろばをみる


実は、私が歌を詠む際に、最も重要視しているのは韻律です。
分かりやすくいうと、歌のリズムです。歌を詠むの『詠む』とは、元々【うたう】という意味なのです。
リズムと言って不思議に思う人も、いらっしゃると思います。
短歌は、皆さんご存知のように、31音、それも57577と、全ての歌が同じ音数です。
これでリズムが良い歌と、悪い歌の違いが出るのかと感じる方もいらっしゃいます。

 リズムといっても4拍子とか2拍子とかの音楽のリズムではなく、音の響きで感じるものです。
韻律を整えるのに、色々な手法がありますが、私の場合は母音や子音の使い方や促音、濁音の使い方で、リズムを出すように心がけています。
今回の、詠進歌の場合は濁点をポイントに、配置することで韻律を整えたのです。

それでは昨年詠進し掲載頂いたこの歌はどうでしょう。

ちはやぶる 境内染める 黄葉に 
 稚児ら戯る 秋空の下


この場合は3句切れの歌で、初句の3句は子音が句頭になっていますが、後句の方は母音を句頭にすることで、韻律を整えようとしました。
さらに、この歌は韻律以外にも、縁語という技法も使っています。
縁語とは連想できる関連ワードを散りばめる手法です。
この歌なら『ちはやぶる』『境内』『稚児』が神を連想させるワードとして使いました。
さらに『ちはやぶる』は枕詞となっています。

 このように、私の歌は、近代短歌や現代短歌の一般的な評価とは、全く異なる私が詠みたい歌なのです。
今までの、私の歌を見られた方は、分かるかも知れませんが、私が詠みたい歌の本質は、若者短歌や現代短歌と同じような、現代仮名、口語体の歌に、和歌や古典和歌の技法を織り込んで、言葉遊びをしたいのです。
当然、古典に使われるような古語とは違って、現代語の方が遊び幅が狭いので、難しいところはあり、かなり苦戦をしています。
その中で、どこまで、できるのかをチャレンジしているのです。

実は、矢野先生も、その辺りをご理解頂き評価をしてもらっています。
矢野先生とお話しするのですが、古典和歌から若者短歌やSNS短歌まで、それぞれに良さがあると、柔軟な発想をお持ちです。
もっと言えば、私が目指す歌は、そのどれにも当たりません。それをご理解いただいた上で、評を下さる矢野先生に感謝の念が堪えません。

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