和歌などの古典が好きな方は、知っておられると思いますが、昔からの歌に詠まれる定番の名所を歌枕と言います。名所によっては、その場所と、そこでの名物の両方を差すこともあります。一例をあげるなら『宮島=もみじ』がそれにあたります。
しかし、2008年に王朝文化辞典が発刊されるまで、歌枕として一覧にまとめられているものは近年までなく、歌枕の明確な定義もありませんでした。
その王朝文化辞典は、万葉の御代から江戸時代末期の歌の中を対象として、言葉・事柄・地名など、約1000の項目を50音順に掲載してある辞典です。
しかし、この王朝文化辞典に掲載してないところでも、歌枕の地として観光PRをしている名所もあります。
このようなPRが間違いかというと、そうではありません。短歌で頻繁に歌われる名所は全て歌枕で、回数の基準もはっきりしません。王朝文化辞典では歌枕として掲載されていない歌枕の地ということだと理解してもいいと思います。
美作の地では久米の佐良山が王朝文化辞典に掲載されています。
他に岡山県下では、牛窓、宇那堤の森、唐琴、吉備の中山、児島、二万の里 、藤戸の浦、虫明の迫門があります。
どうしても瀬戸内海沿岸が多いですが、古今和歌集や後醍醐天皇の歌にも詠まれている『久米の佐良山』が入っていることは嬉しい限りです。
古今和歌集
みまさかや 久米のさら山 さらさらに
我が名は立てじ 万代までに
後醍醐天皇
聞き置きし 久米のさら山 越えゆかむ
道とはかねて 思ひやはせし
この有名な両歌を始め、和歌以外でも、
久米の佐良山と言ふ所
越えさせ給ふとて 聞きおきし
久米の佐良山 越えゆかん
道とは予て 思ひやはせし
などと登場している岡山県を代表する歌枕の地となります。