今、放映されているNHKの朝ドラ「舞いあがれ!」のヒロイン舞ちゃんの幼馴染の貴志くんが、歌人との設定で、興味を持って見ています。
その中で、2月の放映のものに、おもしろいストーリーがありました。
それは第三週の編集者から『恋の歌』を求められるという、一連のシーンで登場した短歌です。
『君が行く 新たな道を照らすよう 千億の星に 頼んでおいた』が『君が行く 道の長手を繰り畳ね 焼き滅ぼさむ 天の火もがも』の本歌取りだというのです。
この歌は、奈良時代の歌人である『狭野茅上娘子』が中臣朝臣宅守との問答歌として詠んだとされる歌で、万葉集に収められています。
『君が行く』を使っている歌は、過去の歌にも、かなりの数があります。
例えば『君が行く こしのしら山 しらねども 雪のまにまに跡はたづねむ』という歌もあり、一般的に使う言葉を選んでいるにも拘らず、『発句』と『道』の一文字二音だけで、本歌取りとするには、非常に分かりにくく、和歌としてこれを本歌取りとするには、かなり無理があります。
しかし、貴司くんの短歌は若者短歌です。
新しい技法や、言葉の使い方だけではなく、このようなものも含めて、31文字以外、全てに新しく自由なのが、若者短歌ではないでしょうか?
かなり「分かりにくい」ものも、本歌取りとして解釈していく。
これも、歌の進化だと思います。
ひょっとしたら、この先『君が行く』が、恋の句を導き出す枕詞として、定着していく日が来るのかもしれません。
実は、私的には、もう少し工夫して、この歌を挽歌に詠み『行く』の部分を『逝く』との掛詞にするとか、こどもの成長の歌にして、『行く』と『育』といった掛詞にするとか、もう少し歌のエンタメ性も出して欲しかったのですが、ドラマのストーリーの関係もあって、無理だったのでしょう、このような形になっています。
どちらにしても、この5~6年前、徐々に盛り上がってき、今、空前の短歌ブームとなっているにも拘らず、短歌を取り上げるテレビ番組が非常に少なかったことに、不思議な感じをもっていました。
今回、NHKさんの看板番組でもある『朝の連ドラ』のストーリの中で、取り上げられたことは私としても嬉しい限りで、このことは、歌をしている全ての人が、同じではないでしょうか?
これを機に、短歌を始める人が増えて行くでしょうが、岡山県北でも、これからは若い人の中で、歌を始める人が増えて欲しいと思います。
特に、アットタウンの歌壇コーナーで、評を付けておられる「矢野先生」は近代短歌で歌を始められた方ですが、早くから現代短歌や若者短歌に順応されている先生です。
短歌は、今そのままを、31文字という決められた音数の言葉として、表現するエンターテイメントです。ドラマで描かれたような、難しいものでも、苦しいものでもありません。
年齢性別関係なく、気軽に短歌を、始めてみませんか?