九蓋草に出会ったのは三十年ほど前になる。滋賀県の伊吹山に勤務先の写真クラブのメンバーといっしょに行った。山頂のお花畑にはいろいろな山野草がさわやかな風に揺れていた。その中に背の高い九蓋草が薄紫の長い花穂の先を少し垂らして咲いていた。この場所に薬草として植えられたのが始まりで伊吹山特有の山野草もあった。九蓋草が私の心を捉えたがその後見ることはなかった。
この花との出会いは突然やってきた。近隣のふれあい農産物直売所で販売されていた。迷わず買い求めて庭に植えた。翌年の春には芽を出し順調に育っていった。一メートル程の茎に六枚の葉が輪生して八段つき、三十センチもの花穂には薄紫の小花が密に付き、元から徐々に先に咲いていく。六月は春明菊やフウロ草も咲いてしばらく楽しめた。山頂のお花畑を懐かしく思い出している。
(投稿者・津山市 野の花さん)