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奥津温泉

国道179号線を津山方面から北上し、県境方面を目指す。

途中、左手に見事な景観の奥津湖が見えてくる。
一帯は花崗岩が河川に浸食された渓谷が続き、覆いかぶさるように自生する木々に目を奪われる。
目指す奥津温泉を前に、『みずの郷 奥津湖』でいったん休憩。
こちらの湖側に出る。
目に飛び込んでくる奥津湖が一望できる見事なロケーショに、「ほわー」とする感覚に落ちる。
時間が止まるとはよく言ったもので、何分でも眺めていたい風景だ。
しかしながら、現実には時間は止まってくれない、日帰りで奥津温泉に行き、奥津狭をめぐるスケジュール。




後ろ髪を引かれる思いで『みずの郷 奥津湖』を後にする。
車に乗り込み北上、奥津温泉を目指す。
5分ほど車を走らせた辺りから『国名勝 奥津峡』に指定されているエリアだ。
その先、数分で奥津峡を通り抜け奥津温泉に、国道から細い道に入る。
『奥津温泉』に到着だ。

奥津温泉は、中国山地、吉井川の上流部にある温泉で、美作三湯のひとつに数えられている。
津山藩主『森』家の湯治場としても有名で、特に「奥津壮」は当時、森家専用の温泉として番所があり、浴室に鍵まであったと記録されている。
奥津温泉全域で湯量は豊富で、自然噴も多く弱アルカリ性の無色透明の透きとおった湯は、「美人の湯」として多くの人々に愛されている。




本日のお目当て『奥津橋』。
この橋が温泉街の中心となり吉井川に支流の尾路川が合流する地点。
橋の麓には、足湯とあの有名な『足踏み洗濯場』がある。
現在では当然日常生活で、足ふみ洗濯をしている人は居ようはずもない。
が、観光客用に3月上旬~12月中旬の期間は日曜、祝日に限り8:30~8:45の15分間だけ実演して見せてくれるらしい。
実演時間を考えると、見れる人の多くは宿泊客になるのだろう。
実演を見れないのは残念だが、せめて実際の洗濯場を見たいと思いたったのが、今回の始まりだ。



奥津橋手前の温泉旅館『花美人の里』の駐車場をちょっと拝借し、奥津橋に。
橋の手前から川土手を見下ろすと、手前の土手に『足場』奥の土手に『足ふみ洗濯場』があり、その向こうには、温泉旅館と思われる建物が見える。
期待通りのロケーションに「心ウキウキ」。
早速、足湯に降りて裸足になる。
弱アルカリの泉質らしい、ちょっと「ぬるっ」とした湯ざわりが気持ちいい。
酸性である皮膚と肌から分泌している皮脂が弱アルカリと反応し、表面を滑らせているのだ。
不要な角質取れていくかのが「ぬるっ」とした湯ざわりになる。
まさに『美人の湯』そのもの。
『足湯』を堪能した後は対岸に渡って『洗濯場』に降りてみる。
降りてみると『足湯』とあまり変わらなぞ。
残念ながら、実際に『足踏み洗濯』を見ないと場面を想像できない。
己の想像力のなさにもガッカリ。
幸いなことに、『洗濯場』近くに『足踏み洗濯』をしているシーンが描かれている。
絵を見ると、なんとなく洗濯シーンがイメージできた。
足ふみ洗濯は、猪などの獣が襲ってくるのに目を配るために、自然と始まったとの記載。
「えっ猪が遠くから襲いに来るの?」
野生の獣は人との接触は嫌がるはず。
しかし、それはそれで、あまり気にせずに奥津荘方面を見学に行く。




奥津荘・東和楼の周りは風情溢れる建物が多い。
元々旅館だったのが容易に想像できるもの。
商店を営んでいたであろう建物。
数は多くないが、それぞれが昔の華やかだった時代を感じさせてくれる。
奥津荘周辺を満喫し、そのまま上流に移動して河鹿橋へ。
この橋の麓から『歌の小径』というものがある。
与謝野鉄幹、晶子夫婦が度々湯治に訪れているが、その時にこちらで歌を詠んでる。
小径には奥津温泉で詠まれた歌が石碑になっている。
石碑に足を止めながら風景を楽しみながら歩く。
彼らはここで、どんな思いでこの歌を詠んだのであろう。
そんなことを想像しながら。
じっくり奥津温泉を楽しんでいるともうこんな時間に。
滞在2時間。
あまり、ゆっくりしすぎると日が落ちてしまう。
足早に駐車場に戻り、一路奥津峡へ。




奥津温泉から奥津峡は車ならすぐだ。
国道まで戻り、少し進んで消防署の前から旧道に入る。
ここから入って橋を渡ると「名勝 奥津峡」だ。
しばらく行くと般若寺温泉がある。
そこを過ぎると奥津峡も本番だ。
川を見ながらゆっくり「ジワー」と車を進める。
速度は5キロほどであろうか、ジョギング程度のスピードだ。
幸い他の車は全くない。
すると建物が見えてくる。
「大釣温泉」だ。
見事なまでの渓谷美を堪能しながら、所々車を停めで川をのぞき込む。
春先の空気が心地よい。
ここでは空気までが贅沢なごちそうに思える。
しばらく続く奥津峡を、ゆっくり進んでは停めるを繰り返していると『名勝 奥津峡』の標識や看板がある駐車場に出る。
この辺りを過ぎたあたりで、『名勝 奥津峡』も終了となる。
奥津峡の渓谷美を堪能し、本日の小旅行を終わらせる。
今回の奥津湖・奥津温泉・奥津峡は、ゆっくりと訪れみて、改めて岡山県屈指の景勝地であり保養地であることを実感した。


奥津温泉観光協会
鏡野町奥津463
0868-52-0610

(ライティング 星護禄胤) 

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