アットタウンWEBマガジン

猫多川賞受賞作家マタタビニャンキチ先生物語~ミックスフルーツのジェラート(後編)

2019年09月01日

タクシーの運転手さんは情報通で、その街の顔なのである。
「ブオォォオオーン」と直ぐさま、スピード違反かと思うほどの速さで、大阪城公園の移動型なんでもイタリアン・ジェラート・ラッテさんを案内してくれた。
「お客さん、たぶんここなら大丈夫やで」と運転手さんは目的地ではないのに、愛想良くそこで下ろしてくれた。
「お釣りはいいですから」
小生は感謝の気持ちも込めて2000円を運転手さんに差し出した。

「あいよー!!」運転手さんも愛想良く男前に次ぎのお仕事に丁寧に磨き上げられた愛車を走らせた――

その移動型なんでもイタリアン・ジェラート・ラッテさんは30代前半ぐらいの気前のいい女性店員さん2人が切り盛りしているようだ。

「ミックスフルーツのジェラートをお願いできませんでしょうか?」
と小生は頼み込んだ。

店員さんたちはイヤな顔一つ見せずに、ささっと職人技の域でメニュー以外の
ミックスフルーツのジェラートをつくりあげて、

「おおきに!!500円になります!!」と笑顔で小生に手渡してくれた。

小生は店員さんに500円を渡し、深々とお辞儀をした。

小生は心の中で、女性のワガママに振り回されるぐらいなら、
次作の純文学小説「華麗なるミュゼット家の人々」のプロットで苦悶する方が
まだましだと痛感していた……

小生はそのミックスフルーツのジェラートを大阪城公園のベンチで
アキコさんに手渡した。

アキコさんは「ありがとう」も言わずに、満足そうにミックスフルーツのジェラートを無口で嗜んだ後、ニャンキチの前からプラダのバックを頼りなさげに持ち上げて、きつい名も知らぬパルファムの香りだけを残してさっさと小生の前から立ち去った――

独りぽつんとベンチに残されたニャンキチは、ビルの向こうのやがて消えゆく遠い夜空の三日月と金星を眺めながら、大きなあくびをしたあと、始発の電車を長々と待っている間、またもやトホホな気持ちになっていた――



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