うつ病を知ろう
うつ病は、何らかの過度なストレスが引き金になって起こることもあると考えられています。さまざまなストレスのうちで特に多いのは「人間関係からくるストレス」と「環境の変化からくるストレス」です。例えば「身近な人の死」や「リストラ」などの悲しい出来事だけではなく、「昇進」や「結婚」といった嬉しい出来事や環境の変化から起こることもあります。
うつ病になりやすいタイプとして、まじめで責任感が強く、人あたりもよく、周囲の評価も高い人が多いということがいわれています。
このようなタイプの人は自分の許容量を超えてがんばりすぎたり、ストレスをため込んでしまうため、こころのバランスを崩してしまいます。
すべてに完璧を求めるのではなく、物事に優先順位をつけてやっていくようにするなど、考え方を変えていくこともうつ病になりにくくするためには重要です。
うつ病は、一言で説明するのはたいへん難しい病気ですが、脳のエネルギーが欠乏した状態であり、それによって憂うつな気分やさまざまな意欲(食欲、睡眠欲、性欲など)の低下といった心理的症状が続くだけでなく、さまざまな身体的な自覚症状を伴うことも珍しくありません。つまり、エネルギーの欠乏により、脳というシステム全体のトラブルが生じてしまっている状態と考えることもできます。 私たちには自然治癒力という素晴らしい機能が備わっていて、通常はさまざまな不具合を回復へ導いてくれます。私たちは日常生活の中で、時折憂うつな気分を味わいます。不快な出来事によって食欲が落ちることもあります。しかし、脳のエネルギーが欠乏していなければ、自然治癒力によって、時間の経過とともに元気になるのが通常です。
うつ病を分類する場合に、①症状の現れ方による分類、②重症度のよる分類、③初発か再発かによる分類、④特徴的な病型による分類など、さまざまな分類の仕方があります。以下に簡潔に説明します。ちなみに、新型うつ病や現代型うつ病といったものは、専門家の用いる診断基準には存在せず、そのため定義もありません。
うつ病は「メランコリー(親和)型うつ病」と「非定型うつ病」とに分けられます。
非定型うつ病は別名 がたくさんあり、新型うつ病・逃避型うつ病・ディスチミア型うつ病などと呼ばれることもあります。
精神科医の香山リカ氏は「5時までうつ」と呼んでいることも知られています。
「メランコリー(親和)型うつ病」と「非定型うつ病(新型うつ病・逃避型うつ病・ディスチミア型うつ病)」の二種類は、症状こそ似ているが異なった性格形成や行動パターンをしています。
モノアミン仮説というのは、簡単に言えば「セロトニン不足がうつ病の原因である!」という仮説で、抗うつ薬はこのモノアミン仮説に基づいて作られています。
実際に脳内のセロトニン濃度を測定することができないため、モノアミン仮説はいつまでたっても仮説だったのですが、数年前に「うつ病の原因はセロトニン不足ではない」という研究結果が発表されたというのです。
つまり、セロトニン不足を解決するためにデザインされた薬である抗うつ薬では、うつ病の根本的解決にはなり得ないということ。
軽いうつ病は薬を飲めばすぐ治る、と思っている人がいるのだとしたらそれは大いなる誤解です。
抗うつ薬は重いうつ病の症状を和らげるためのもの。
治すためのものじゃない。
・選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
フルボキサミン(ルボックス、デプロメール)、パロキセチン(パキシル)、セルトラリン(ジェイゾロフト)、エスシタロプラム(レクサプロ)
・セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)
ミルナシプラン(トレドミン)、デュロキセチン(サインバルタ)、ネファゾドン(サーゾーン)
・三環系抗うつ薬
塩酸アミトリプチリン (トリプタノール、ラントロン)、塩酸イミプラミン (イミドール、トフラニール)、塩酸クロミプラミン (アナフラニール)、マレイン酸トリミプラミン (スルモンチール)、塩酸ノルトリプチリン(ノリトレン)、アモキサピン (アモキサン)、塩酸ドスレピン (プロチアデン)、塩酸ロフェプラミン (アンプリット)
・四環系抗うつ薬
塩酸マプロチリン(ルジオミール)、塩酸ミアンセリン(テトラミド)、マレイン酸セチプチリン(テシプール)
・トリアゾロピリジン系抗うつ薬
塩酸トラゾドン(レスリン、デジレル)
・その他
スルピリド(ドグマチール)、アリピプラゾール(エビリファイ)
(ライティング:上総 北辰)