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猫多川賞受賞作家マタタビニャンキチ先生物語~PORT ART&DESIGN TSUYAMA(ポート アート&デザイン) 津山の黄昏【後編】

2019年08月18日


「5年、彼はネパールのカトマンドゥの貧困な娼婦宿で彼女たちと寝起きを伴にしていたそうです。その間にたまたまチャパティの商店で好々爺そのもののチベット仏教の最高指導者のダライ・ラマ14世とも偶然に邂逅して親好を深めたとも噂をまことしやかに耳にしました。そして、日本に帰国したそうなんです。」
とにかく小生のレベルでは思いもつかなというよりも、彼の経験の一つでもする人など日本人に何人いるだろうか?
まだ、話は終わらず彼女は続ける。
「……でも、彼は日本にうまく馴染めなかったそうなんです。日本の画壇ってすごく保守的なので、異端を凄まじく嫌うのです。」
「そりゃ異端のレベルではないでしょう!」と思いながら、さらに彼女の話に耳を傾ける。

「そんな理由で彼は、日本の何処かの山葵が自生しているような。清流のとても美しい名も知らぬ山奥にひっこんじゃったそうなんです。」
「そりゃそうがいいでしょ」と小生も納得する。
彼女の話の中で、はじめて納得した気がし何故か安心した。

「そんな彼の現状は?」この話が始まって初めての小生から問いかけると、彼女は表情を緩めて答える。
「今は呼吸法でもあるヨガや、そこから派生した宗教や思想を伴わない骨盤エクササイズの先生もしながら、家庭菜園などしていて、気の趣くままに趣味で絵画を描いているそうなんです。そして、彼は東京へは年に2回ぐらいしか上京しないそうなんです。」

彼女の話は饒舌さを増しこう続けた。
「だから、名前が世にでないんだと思います。そんなに素晴らしい才能をお持ちの方に是非、御会いしてみたいんです。……とにかく特別な人なんです。」


「それって、君にとっても特別な方なんじゃないのかい」

吾輩もちょっと意地悪に聞いてみたが、彼女はさらりと。
「いえ、御会いしたこともないですから……」
そんな彼女に
「その人、うにクレソンを嗜みながら日本酒の上善水如のぬる燗をチビリチビリと飲んで、上機嫌になるとラルク・アン・シェルのヴォーカルのhydeの初ソロの曲evergreenを、いきなりファルセット・ヴォイスで歌いはじめるでしょう?」

目を丸く見開き、明らかに驚いた表情で彼女は
「どうしてわかるんですか!?」

吾輩はどや顔で、こう答えた。
「その奇特な方が貴女の目の前にいるからですよ……」
中尾美穂さんはクリクリッとした大きな瞳の瞳孔を更に大きくしてマジマジとニャンキチ先生の風体を眺めて、「し……失礼しました……」と霧のようにスーッといなくなってしまった……


今度こそは!?と八百万の神々に日々素敵な女性とお付き合いできますようにと願っていた、ニャンキチの気分はまたもやトホホ……となった……。

ニャンキチ先生が、猫多川賞受賞を受賞する遙か昔のお話である……。

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