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湯原温泉

湯原温泉

湯原温泉は、自噴する温泉が非常に多いため、古来くから大勢の人々に利用されていました。
この地域は、古墳時代より「たたら製鉄」の盛んで金山(ぼた山のような不要物の山)が多くあります。
多くの労働力を必要とするたたら場は1000名以上の集団で作業を行っていました。
たたら場のイメージは、アニメ映画「もののけ姫」の中にも描かれており、鉄を作るには良質の砂鉄と大量の燃料が必要で、過酷な労働条件で身体を壊す人も多かったようで、療養所としての温泉が利用され、湯原もその拠点になっていたようです。




湯原温泉が最初に歴史に登場するのは、平安時代中期のことです。
「播磨の名刹、書写山円教寺の名僧、性空上人(書写上人とも呼ばれる)が重病で倒れ、その時夢枕に天童が現れて、この湯を暗示したという。性空はその地に赴き、平癒。」と伝わっており、それ以後、薬湯として日本国内に広く知られるようになったとのこと。
その後豊臣秀吉時代、五大老宇喜多秀家の生母「おふくの方」が病を癒したといわれ、その御礼に秀家が浴室を改修したといった話もあります。
秀吉は、おふくを寵愛しその結果、秀家が秀吉の五大家臣まで上り詰めたと言われ「おふくの方」は、妖艶な美貌だったと伝えられています。
生まれはこの地方で戦国の数奇な人生の中、羽柴時代に秀吉の側室となった方です。

近年では、旅行作家の会代表の野口冬人が行った露天風呂番付で天然の露天風呂「砂湯」が西の横綱にランク付けされていることでも有名です。
「砂湯」の名称の由来は自噴する温泉が底にある砂を舞い上げながら湧き出るため「砂湯」と呼ばれています。




「砂湯」には露天風呂は合計3つもあり、広さも30人くらいは余裕で入れるのではないかというほど大きいものです。
横には川が流れ、周辺は自然豊かな森が広がります。
また、「湯原ダム」が目の前に迫りくる光景はまさに圧巻と言えます。
入浴料は無料ですが、混浴ということもあり「湯浴み着」(レンタル料金:2,000円、内預託金1,000円)の着用が義務付けられ、水着NGとのこと。
この3つの露天風呂、川の上流側から順に「子宝の湯」、「美人の湯」、「長寿の湯」と並んでいます。
「子宝の湯」と「美人の湯」ぬるめのお湯で広々として、最も下流の「長寿の湯」は熱めになっています。
泉質はアルカリ性単純温泉で、源泉温度は48~51℃ 。
強いアルカリ性泉質のおかげで、お肌がすべすべすることでも有名で「美肌の湯(美人の湯)」として名を馳せています。
湯原温泉郷(湯原温泉・下湯原温泉・足温泉・真賀温泉・郷緑温泉の総称)全体で15箇所の源泉があり、推定毎分6000リットルの豊富な湯量があるとも言われています。
特また、これらの泉源が全て自噴泉であることも、湯原温泉郷の大きな特徴です。




実は湯原温泉の魅力は温泉だけではなく、温泉街の風情が湯治客や観光客に人気が高く、河川敷の湯原温泉駐車場から露天風呂砂湯までの通称「からんころん通り」に、ジブリ映画「千と千尋の神隠し」のモデルになった「油屋」。
タイムスリップしたかのような時代を感じさせてくれる建物が魅力です。
他にも、大衆食堂などの飲食店や射的屋さん、独楽の博物館、ガラス工房、土産物店、温泉ミュージアム、はんざきセンターなど、昔ながらのものからオシャレなものまでギュッと凝縮された楽しい空間になっています。
「からんころん通り」の中間あたりに赤い欄干の「つづみ橋」があり、旭川の対岸の鼓岳に向かい拝み手を打つと鼓の様に音がこだまして返ってきます。
木の葉がが落ち、川の水が少なくなる冬のほうが音が良く反射すると言われていますので、雪景色を見ながら散策するのもお勧めです。




鼓橋を少し進むと湯原温泉薬師堂が見えてきます。
「明治時代の大水害で本尊がお堂ごと流されましたが下流で見つかり元の場所に戻ってきた」という言い伝えから、「失くしたものが帰ってくる」「健康が帰る」「銭が帰る」などのご利益があるとされています。
この薬師堂にも温泉が湧いていますので、ぜひ、手水舎で御手洗をしてみてください。

さらに進んで、旅館やお店が切れるところに「寄りそい橋」と呼ばれる「湯橋」があります。岡山県の近代遺産にも選ばれている全長45メートルの木造の吊り橋で、渡ると橋が揺れ、自然と寄りそうことから「よりそい橋」と命名されたとか。
とても素敵な愛称です。
周辺は「湯原カジカガエル生息地」として生息地が国の天然記念物に指定されており、初夏は新緑を楽しみながらカジカの声に耳を傾けるなんて贅沢なこともできます。
初夏以外でも、春は桜、秋の紅葉、冬の雪景色と季節ごとに楽しみ方も色々。

移りゆく自然を湯に浸かりながら眺める至高の喜びを感じられる場所です。


所在地:真庭市湯原温泉

(ライティング:星護 禄胤)

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