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@藍染め作家・梅川知子さん

ご自身で染められた藍染めの作務衣を着た梅川知子さんが小春の日差しの中迎えてくれた。
美咲町金堀の梅川さんの自宅兼工房は、周りを自然に囲まれた高台にある。そこで染め物に使う材料をすべてご自身で育てられているという。


地道に棉(わた)を育てることから
まず棉の種を蒔き育てるところから始まるというのだから、作品を作る時間の流れはとてつもなく長く地道だ。
糸を作る工程は、5月に種を蒔くことから始まり、なるべく手をかけず自然のまま育てる。
棉は品種によって、色や風合いなどが違うので数種類を育てているという。
花はピンクや黄色とさまざまだ。花が終わると実がなり収穫。
その後「ねじ枠」という作業で種と棉を分ける。
大量の実を一つ一つねじ枠に通しながら分けていく。
ふわふわと可愛らしい棉の実が「ねじ枠」を通って分けられた後は青空に浮かぶ浮雲のようになっていく。
実際にその作業を見ると右手でくるくるハンドルを回すと約束したように種と分けられる棉たちがとてもいとおしく感じてくる。




紡ぐのは自身の手かげんや感覚

梅川さんがインドで購入した「ジャルカ」という紡ぎ機で種を除かれた棉を紡ぎ、巻き取りをしていく。
手で送るかげんや、撚りをかけるかげんで調整し、滑らかな風合いやごつごつした布が生まれる、その時に彼女の中ではすでに作品のイメージができているのだろうと感じた。
紡ぎ巻き取ったまさに生成り色の糸は、束にしてきれいに洗剤で洗うのだがその時には、撚りを戻さないように重しをかけるなどの作業も経験を積み手かげん、手触り、体で感じ取った感覚をとても大事にしている工程だと感じられる、なんといってもほわほわ、ふわふわした棉に触れる梅川さんの手のやさしさ、目のやさしさが感じられるのだ。



糸を染めていく
染め物、それはとても奥が深い。
茜草の根を煎じて染める茜染め。
紅花を煎じてセルロースパウダーを加え分離した色のピンク色だけを取り出す紅花染めなどあるが、藍染めの工程も梅川さんは一年草のタデアイを育て、刈り取り、葉を乾燥させ、その後水を加え発酵させる。発酵までに温度管理に十分注意をし蒅(すくも)ができるのを待つ。
一方で椿を燃やした灰をとり灰汁を取り出す。
その灰汁と蒅を石うすで練り、湯やお酒などを加え約一週間「灰汁建て」する。
発酵したものは「藍の華」という泡を発生させ、その中に糸の束を浸けてはあげ、浸けてはあげの作業で空気によって酸化させる、その作業の回数で「藍を何回かけたかで色の調整をします」と説明してくださった。


国内はもとより海外の技術も取り入れ、伝える
梅川さん、染め物を通して十数回の国際交流で各国を飛び回っている。
バングラデシュや、ペルー、韓国など挙げれば枚挙にいとまがないが、それぞれの国や人たちで染め物のスタイルが違っているという。
ごつごつしたものさらさらしたもの、また伝統的な柄、風土に対応した布などさまざま。
各国で友好を深めるととも、タイやマレーシアからは留学生を招き、藍染め体験をしてもらうなど熱心に一途に染め物を見つめている梅川さんはとてもきれいな横顔を見せてくれた。



藍を楽しむ梅川さん
「今は綿と藍を楽しみたい」と言う。
精力的に海外を巡って来た梅川さんは、地域の人たちとお茶を飲みながら、おしゃべりをしながら座布団などの小物をつくったり普段使いのものを作っていきたいという。
今そうできることがうれしいと笑顔を見せる。「白と藍のグラデーションの妙」を模索し続けてきた梅川さん。今後も藍染めを楽しみながら彼女らしく過ごしていってほしい。



すてきな出会いをありがとうございます
後日談になるが、梅川さんから取材後にお手紙をいただいた。
私へ「有難う」っていってくださり「私は何で、藍が好きなだけで45年も続いたのかな?考えてみたら(癒されるわ~)と、私の作品の前で言われているのを聞いて(私も何かの役に立っているのかな~?作風が変わって今でも続いているのかな~?)と今回の取材で分かったような気がしました。(中略)私のチャイでよろしければ、ご家族、お友だちを誘って飲みに来てくださいね」と・・・。
このお手紙は、梅川さんのお人柄をとてもよくあらわすもので、私の何十文字何百文字の原稿よりも、梅川さんをあらわしているのだ。
このお手紙は藍染め作家・梅川知子さんの純粋な藍染めに向けた思いと感じ、私は取材後、原稿を書いているうちに、はじめて泣いた。
    (取材ライティング・武本明波)

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