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思いの詰まったおひな様、ちひさきものが好き

江見写真館のおひなまつり

津山市山下の江見写真館は、文化庁からは国の登録文化財に登録され、津山市から歴史的風致形成建造物に指定されている貴重な建物。
玄関南脇にある応接間が半円形に突き出た作りで写真スタジオのある二階建て部分は天井が高く、しゃれた作りになっている。
その江見写真館は津山市中心商店街に静かなたたずまいで風格を保っている。




一緒におひな様を飾らせてもらう

如月吉日。
写真館の奥様、江見東母子(ともこ)さんから「おひな様を一緒に出しませんか」とお誘いを受けた。素敵な東母子さんは憧れの女性だ。江見家のおひな様飾りにご一緒させていただいた。
春の温かい日差しの中、2階の「男子の待合室」に通されると、時を感じる日本橋三越本店の名入りの木箱から、少し色あせた2体の女雛と男雛がすまし顔でお出ましになった。
そっと包んでいた柔らかい和紙を開きながら東母子さんの曾祖父の思いの詰まった人形の全体が出された。曾祖父が彼女のお母様の誕生に合わせ買い求めたものだそうだ。




ひとつひとつさりげなく

静かに女雛の檜扇や、男雛の太刀などを直している指先が優しい。
そして、この日のために作ったという母直伝のおひな祭りのお膳が出された。
フキ、タケノコなど春の感じられるものに、かまぼこや錦糸卵で彩りをつけた蒸し寿司。
海老のしんじょと菜の花のお吸い物。
菜の花の白和え。生麩のゆず味噌田楽、蕗の薹の天ぷらが象彦の小さなお膳に上品に盛り付けられている。
「ひなあられと白酒もつくんですよ」となんだかとても「いいもの」で手をかけたお寿司膳。
お膳の横にはさりげなくちりめん細工の細長いおひな様が。
ひとつひとつに手の込んだもので、違う世界に来たみたい。




「ちひさきもの」をめでる東母子さん

さておひな様はまだまだ続く。
次に通されたのは「婦人待合室」。
ほう「女子の待合室」ではないのね。
全身が映し出される大きな鏡のある和室にはレースのカーテン越しの柔らかな日差しに浮かんだかわいらしい段飾りのおひな様。
高さは30センチくらいだろうか、先ほどの重厚感と歴史を感じるおひな様とは違うが景色にそぐうもので小さなぼんぼりもついているという逸品。
ため息をもらす隙もなく、応接間にまねかれ右往左往の私。
家の中で迷子になってしまったのだ。

「枕草子と一緒、小さいものが好きなのよ」そうか「蓮の浮葉のいとちひさきを、池より取りあげたる(中略)何も何もちひさきものはみなうつくし」なのだ。
おひな様の季節にはかわいいものがほしくなるの。
と少女のような笑顔を見せる東母子さんはとてもかわいい。
鳩居堂で買い求めたというちりめん細工のおひな様はぼんぼりや、桃の花、花橘、菱餅の上に赤い傘をかぶせられ、つるし飾りが華やかなもの。
壁に掛けられた心地よいピンク色にカメオブローチのようなものはウエッジウッドで日本向けにつくられたもの。どれもこれも一流品ばかりだ。




津山城下町 雛めぐり

第21回津山城下町 雛めぐりは4月3日まで、津山市の中心商店街では、おかみさんのひなまつり。
津山城(鶴山公園)は津山城雛まつり。
城西地区は城西雛めぐり。
城東地区では梶村邸の雛まつりが行われている。
各種イベントも行われるので参加してみてはいかがですか。




うきうきすることがありそう

江見写真館では東母子さんに説明していただいたおひな様の他、まるで宝探しをするかのようにたくさんの「ちひさきもの」があるので、ぜひ訪れてほしい。
雛めぐりマップに、江見写真館も雛かざり展示店と表記されている。
運がよければ東母子さんの案内や説明も聞くことが出来るかもしれない。
江見写真館。もっと楽しい、うきうきするような事に出合えそうで目が離せない。
                          
(取材ライティング・武本明波)

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